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【さよなら三画、また来て四画】


 古明地こいしは帰ってくるなり台所へ直行し、戸棚をまさぐって銀色の長細い缶を取り出した。薄い点状の錆が浮いたそ
の蓋を開けると畳のような匂いが周囲に漂ったが、それは缶の中身と畳との共通項である「草」というただ一点に基づく、
古明地さとりの錯覚である。缶の中身は台所にたいへん相応しい緑茶の茶葉であり、そこに変哲も何もないし、まさか
本当にイ草が詰め込んである筈もない。

 どうにも明るくない午後である。地下に建っているのだから陽が差さぬもむべなるかな、地霊殿の居間だが、人員は集ま
っているのに誰も彼もが無言を貫いているから暗さに拍車が掛かっている。とはいえいがみ合いとか、不機嫌が充満した、
険阻な意味での暗さではない。寧ろ屋敷全体に蔓延した暗さのその正体は、行き着くところまで行き着いた弛緩ないし懈怠
に近く、照明さえも眠たげな仄明かりの下で誰かが数時間前に剥いたみかんの残り香だけが寂しげに、まだ仄かに漂ってい
た。そういえば霊烏路空はみかんが嫌いだそうで、少し前から執拗に他のおやつをおねだりし、家主さとりの強硬な拒絶に
対して真っ向対立をぶち上げて現物捜索へ出掛けたところで、先程から姿が見えなくなっている。
 取り出した自分用の湯呑みを一瞥、こいしはそれを指でなぞって、どうやら埃の付着を視認したらしい。長く使わず収納
しっぱなしだったその湯呑みにふっ、と息を吹きかけて照明の光にかざし、首を否定の向きに一度振る。
 どうやら観念したらしい。
 開けたばかりの茶缶の蓋を再び閉め直し、さとりが横目で眺めている中、当該湯呑みを持って流し台の方へ歩いて近づい
てきた。

 古明地こいしは今や放蕩の悪癖を遠慮無く悪化させる一方であり、さとりも閉口極まって最近は何も言い出さない。大方
一ヶ月ぶりの帰宅となった午後のお茶のお時間にも、つまりは沈黙で、こいしは例によって気配一つ立てない魔法の歩を刻
みつつ、さとりの横目を知ってか知らずか湯呑みの埃ばかりを気に掛けて水場へ歩く。足許では猫姿のお燐がキャットフー
ドを啄んでいる。あわや踏まれそうなところを、紙一重でかわしてゆくこいしの足。
 お燐もこいしも、或いは互いに気付いていないのかもしれない。
 さとりの背後に回ったこいしから微かに水音の聞こえて、すぐに已んだ。
 戻ってきたこいしの手にはハンカチーフがひとつ。どこで貰ったのか、小綺麗な花柄の薄布と一緒に戻ってきた妹は丁寧
に湯呑みを拭き拭き、歩きながら愛おしげに湯呑みの素肌を撫ぜている。枯れた芝みたいな色のそれは、別に高価な代物と
いうわけではない。まして美術品の造形美を愛であげるような、晴れやかな文化性を持ち合わせている筈もなく、単純に
久々のお茶が嬉しいだけなのだろう。姉は姉でこちらは洋風、レモンを一切れ添えた食後の紅茶を僅か口に含んだその目の
前へ、足音のない足音がすーっと進んで来たところで不意に

「おねえちゃんって実はかなりバカよね」
「何ですとー!」

 いきなりビッグセールスを飛ばした。
 足許でお燐がキャットフードの一粒をくわえたまま、ん? と顔を上げる。
 厨房の方から物音がして、空の小さな悲鳴。

「だってさぁ――」

 以下、こいしの言い分はこうであった。
 おねえちゃんって地霊殿での温度管理くらいしかやることない。最近はそれもペットに任せて自分じゃぜんぜんやってな
い。
 ろくに地上にも出てこないし、実はおつむは相当重症だったりして!
 さとりはかちり、とカップを置き、深い息を一つ吐き出した。

「ええ、ええ――たまに帰ってきたかと思ったらなかなかビッグマウスですねえ我が妹。大人の世界に肌で触れて、一回り
も二回りも色々デカくなって大変素晴らしいことです。もう一つ大人の世界を教えて差し上げましょう、私のパンチはマジ
重くてすっごいわよ」

 嘯くさとりを、こいしは一顧だにしない。
 そのまま念仏を聞く馬となり、かちゃかちゃと元のお茶棚をその蹄で物色している。銀色の缶の横には茶褐色の小さな紙
箱が置かれている。更に横にはずんぐりむっくりで白磁で壺型でそれそのものが何だか甘そうな砂糖入れと、突き刺さった
銀の匙と、先ほど霊烏路空が放ったらかしにしていった湯呑みが一人で佇んでいる。
 更にその奥の小さな麻袋は、詰め替え用の紅茶の茶葉が入れてある。こんなんじゃ香りの保存性も減ったくれもあったも
のじゃない、と茶葉が不平を漏らす。その下に何故か布巾だけは丁寧に二枚重ねで敷かれており、戸棚の天板に汚れが付か
ぬよう、彼らが日夜身を挺して守っているのだった。
 躊躇うことなく銀色――先ほどと同じ缶――を手に取ったこいしは、

「だって缶にほら、こんな風に中身書いて貼ってあるし」

 缶の蓋にぺちっとくっつけてある、少し萎びた和紙を指さした。
 日本茶、と書いてある。

「あら、中身が分かりやすいようにであって――別に私の頭には何の関係もないです。悪い?」
「読み仮名が振ってある」
「うぐ」

 さとりは怯み、こいしは急須どこだっけーと呟きながらあちこちの棚を開けたり閉めたりして、缶は手に持たれたままで
あり、おどおどと我が身の運命をこいしの小さな掌から窺っている。霊烏路空同様ひとり置き残された洗いたての湯呑みは
出番を待ち続ける。それに寄り添う茶褐色の箱には、紅茶の二文字とこうちゃの四文字が横にていねいに揃えて書いてある。
 急須を見つけたこいしは小鳥のように肩を揺らして笑い、銀色の缶の蓋を二度目に開けた。ぽこんと音がして、芳醇な日
本茶の香りがまたイ草めいて漂い、手許に置いたその蓋には日本茶という三文字とにほんちやという五文字。
 白い壺は?
 二文字と三文字。

「普通さあ、こんなのに振り仮名って振らな――」
「うるさいうるさいうるさい!」

 思わず大声が出た。
 実際問題読めないのだから仕方がない。元々はお燐が悪いのだ。「このままじゃ便利が悪いから、分かりやすく中身を書
いておいて頂戴」と頭の良さそうなペットに頼んだまでは良かったのだけど、ちょっと目を離している隙に御主人様が読め
ない字で書きやがったからこっぴどく叱ってやった。
 次の日には振り仮名がついていた。
 さとりは満足している。
 なるほど地霊殿の切り盛りのみを掌管してきた古明地さとり、漢字なんてそりゃあよく知らない。だけど厳密に言えば、
日本語に漢字は要らないと思う。平仮名とカタカナがあるのに何故漢字を付けたんだろう。平仮名さえあれば日本語が成立
するんだよ? だったら漢字とか要らない。なんでわざわざ難しくするのだろう。
 にほんちゃと日本茶で、まさか味が変わるわけでもあるまいに。

「か……漢字は苦手だけど、それだけでバカってアンタに言われる筋合いは」
「微分積分は?」
「……え?」

 お燐が先程からじー、と見ているが、さとりは気付かない。

「び・ぶ・ん、せきぶん!」
「……いい気分」
「ほらやっぱバカじゃん」
「むきーっ!」

 お燐が、キャットフードを啄む作業に戻った。
 さとりはいよいよ、妹の暴言を承服できないでいる。それは、学が無いというのは些かの語弊があるからだ。微分積分と
いうのが何なのかはぜんぜん分からぬが、足し算と引き算は完璧に出来る。但し二つ条件があって、足した後の数字が指の
合計本数を超えないことと、引く前の数が指の合計本数を超えないことだ。
 他方国語にしても、学が無いと言われればそれは違う。漢字だって文化の余蘊だとは思いつつもまったく読めない訳じゃ
ないし、文字を読んで会話することが出来るのだから充分である。四画以上の漢字を読めないこと以外は、読書についても
何ら問題はない。
 違うか? 我が妹よ。

「じゃあ三画の漢字、『个』って何て読むでしょう?」
「簡単じゃない。『カサ』よ」
「誰が象形文字つったかしら」
「へ……これ漢字ですの!?」

 はぁ〜あ、とこいしがわざとらしい溜め息をついて見せた。茶棚を顧みて出番を待ちこがれていた湯呑みにふと気付き、
手に持ったままの茶缶からようやく匙一杯の茶葉を取る。
 さらさらと急須の網に茶葉を落とすその淑やかすぎる仕草が、何故だろ無性に腹立たしい。
 お燐は聞こえぬふりなのか聞こえていないのか、再現の見えない食事に当て所ない舌鼓を打ち続けている。厨房からもの
すごい盛大な破砕音が聞こえたのは、おやつを物色している空が皿を落としたからだ。長年のことでもう慣れてはいるが、
今年に入ってからはやや大人しくなり、今年はこれでまだ4回目でしかない。

「じゃあ九九は知ってる?」
「くく……?」

 脳味噌が、またぐるりと白転する。長い人生を歩んできたその歴史の中にさとりは、必死で手探り足探りで
「九九」という単語を捜索する。しばらくの時間を要したが、それでもさとりは何とか一片の記憶に辿り着く。
 あれか。
 掛け算の呪文みたいなやつか。 

「九九……ですか」

 探し求めていたものが見つかり、遠く泳がせていた視線を眼前に戻す。
 じっと見つめていたこいしを、見つめ返したさとり。
 ……そのこいしの微笑みがやっぱり腹立たしくて、さとりは臍下丹田の力を今ひとたび、脳味噌に込めた。左手を柔らか
く拳の形ににぎり、そこから親指だけを下に向けて見せつける。

「……上等です」

 こいしがニッコリと笑い、中指を立ててみせる。
 
「そっちこそ。じゃあ行くよ、」

 きっと睨み合う姉妹。お燐が、足許でまた顔を上げる。
 無言で軍配を返す。
 はい、両者とも手をついて。
 はっけよーい、

「8×6!」
「ちょおま、ちょっと待って」

 たまらずさとりは制止した。
 まったなーし、とお燐もこいしも唇を尖らせているがひとまず無視し、お構いなしでさとりは一つ息を整える。一瞬で焼
き切れかかった脳味噌の回路をひとまずは整理して、ヒューズを新品に取り替え、深い吐息とともに椅子からおもむろに立
ち上がる。
 ゆっくりとこいしに歩み寄り、まるで天使のような相好で微笑みかけ、
 優しく宥め賺すように、まるで愛玩動物にそうしてやるように、妹の頭をよしよしと撫でた。

「ねぇこいしちゃん――いきなり両手を超える数は卑怯よね」
「何がよ!」

 憮然と頬を膨らませるこいし。
 二度目の立ち会いを前にして、ついに観念した空が徒手空拳のまま居間に戻ってくる。湯呑みだけを放置していた茶棚へ
戻り、同じく放ったらかしにされている湯呑みがもう一つあるのに気付いて、怪訝な顔をする。
 空はまだ、こいしに気付かない。
 こいしはまだ、空に気付かない。竜虎相打つ構図にて姉と睨み合っているからでもあるし、また、彼女特有の理由もある。
 こいしの湯呑みは放置されており、後から来た空がこいしの用意した急須にあっさり湯を注いで、自分のお茶にしてしま
う。こいしは空に気付かない。火花舞い散る勝負、互いのアイコンタクトが火蓋を切り落とす。

「まず1の段から勝負なさい。それが公明正大というものよ……」
「じゃあ……1×1」
「……いち」
「1×2」
「に」
「1×4」
「さん」

 ぼがっ、とお茶を吹く音がした。
 原因は霊烏路空である。
 こいしの眉が、みるみる歪む。

「……いちご」
「ごーごー」
「いちろく」
「たると」
「2×4が」
「敏久」
「さざんが」
「オールスターズ」
「さっきから定番ばっかり……じゃあ最初の8×6!」
「レビン」
「定番すぎるじゃない!」
「何がよ!」

 ボケがです。
 霊烏路空は零したお茶を拭いている。ついでにひっくり返した茶缶の中身も元に戻そうとして布巾ごと今度は床に落とし
たりなんかして、もう訳が分からないけどとにかく余計ひどい惨状になった。情けない悲鳴を上げている。
 今まで黙ってじっとしていたお燐が、ふと何かを決起した。
 思い立ったように、じわりと座り直し、きっと瞳を光らせ――その後ろ足で、彼女は首の後ろを猛然と掻きむしり始めた。
 ものすごく痒いらしい。
 すっげえデカいノミとか居るのだろう。

「あーあ。……おねえちゃんがここまでバカだったなんてぇ」

 最後に直球勝負で、こいしが挑みかかるのは九回裏のバッターボックス。
 ほとほと愛想がつきた、といった面持ちで茶棚に戻り、空が勝手に給湯を終えてしまった急須に何の文句も疑問符もつけ
ないで、意に介す様子もなくその残りを自分の湯呑みに注ぐ。
 相手打者は古明地さとりである。
 投じられた、ど真ん中にして百四十キロの直球、

「……はぁ……」

 さとりの見逃し三振で終わった。
 がく、とこいしの肩が少し落ちる。
 さとりは、それさえも見ていなかった。
 代わりに肩を小さく震わせてうふふふふふふふふふふふふふふふふふふふと細波みたいな笑み声を零し、すっかり冷め切
った紅茶を典雅な仕草で口に運ぶ。
 やおらカップをソーサーに戻し、天井をすっと仰いだその瞳は僅かに潤み返り、決して届かぬ青空の彼方にまるで寂寞を
投げ掛けるみたいに、

「よよよ、こいしがこんな子になってしまうなんて、嗚呼、昔は可愛かったのに。よよよよよよ」
「な……泣き落とし? そんなんで……べ、別にそんなんで」

 すっくと、紅茶を飲み終えたテーブルからさとりは立ち上がり、やおらゆったりとした仕草で歩き始めた。夜中の墓地み
たいな声がその口から紡がれる。
 よよよ。
 よよよよよ。
 芝居がかった素振りでさとりは身振り手振り、部屋を斜めに横切ってゆく。泣き声は芝居臭さを通り越して茶番臭ささえ
漂うが、生憎お茶の時間だから茶番で元々であった。たいへんお粗末様である。
 袖からスポットの舞台へ、悠然と歩を進めるその姿は芍薬にも似ている。主演舞台女優さながらの哀愁溢れた雰囲気を古
明地さとりは身に纏い、大袈裟な身振り手振りで歩き回る居間の最果てで床掃除をしていた霊烏路空を踏んづけた。

「昔の貴方はこんなんじゃなかったです――」
「ぎー! 重い重いー!!」 

 その瞳は何を眺めてか、未だ遠くを泳いでいる。
 さとりは声を聞いているのだ。
 声なき声を聞いている。
 空の声は聞いていない。地底の屋敷で空は見えない。
 埃めいた天井の木目にしても、長らく使用された形跡のない食器にしても、その変な形の皿達だって、東方の国を意識し
たステンドグラスの花瓶とそれに突き刺された百合の造花にしても、少しずつ食い違わせた言葉を音無く伝えていて、され
どさとりは忌々しげにその瞳を閉じる。
 何も聞こえてこない。
 何も答えが届いてこない。
 閉じて台詞を続ける。

「おバカな女の子の方が可愛いですのに……」
「えー」

 そ、そうか……? と、踏みつけられた空が呟く。

「うん。うつほはとっても可愛いです。何せほんとにアホでバカだし」
「さとり様……嬉しいです……」
「ほんとのアホやん」

 可愛い、なんて言われた空が頬を赤らめて、こいしが飾りっ気のない所感を堂々と大声で吐き捨てる。うっとりとしてい
る霊烏路空の、頬っぺたに留まらず顔全体が次第に赤らんできているのは、胸部を足で圧迫されているための窒息的な意味
合いも籠もってのことであろう。余命はもう長くないと思う。
 こいしは、見て見ぬふりでそれを眺めている。
 さとりが、見て見ぬふりでそれを眺めている。
 たとえこいしが興味なさげな表情を取り繕っていても、姉であるさとりには分かる。今の打球はどうやらピッチャーの足
許を襲いセンター前へと抜けた。妹の心がたとい読めぬとしても、その未熟な表情でばればれだ。
 そんなにわざとらしく乾いた視線で、隠しきれなかった羨望の視線を投げ掛けるもんじゃない。

「……おねえちゃんのバカ」

 バカで結構なのです。
 いやバカじゃないけど。

「バーカ」

 だからバカじゃないから。

「……バーカバーカ」
「ああもう、バカじゃありませんっ!」
「あ、そ。バカじゃないならつまり、おねえちゃんは可愛くないんだ」
「あ……ぐ…………えっと、可愛いですよ私は。ほら、このキュートな二重まぶたのサードアイとか」
「うん。可愛いね。じゃあやっぱバカなんだ」
「きーっ! もうあっち行けバーカバーカ!」
「わーい、かわいいかわいいバーカバーカ」
  
 きゃははは、と笑いながら、こいしは言われた通りにあっち行ってしまった。
 スキップで居間を出て行くこいしと、ちっくしょぉーとばかり歯ぎしりで見送るさとり。
 その足の下で霊烏路空は哀しげにかぁと啼き、床板に刻みつけるような溜息を零して、今際の際に一言だけ呟いた。

 子供の喧嘩やん。

 
 
 ■ ■
 

 
 廊下を歩いて自室へ戻るその道中で、

「おーい」

 こいしは、後ろから追い掛けてきたお燐に呼ばれた。
 なんだろう、と思いながらもこいしは歩みを止めない。へへへ、と面白そうな顔で駆け足で近寄ってきた彼女は、息せき
切らしてようやく追いついたそこでこいしのスリッパのかかとを思い切りふんづけてくれた。
 思い切りつんのめる。
 スリッパの端っこが、ちょっと破れる感触が足の甲に伝わる。

「ったぁ……なによ」
「外でずっとお勉強してきたんだ?」
「……」
「ね?」
「…………そりゃ、それなりには」

 素っ気なく口にし、そしてそれ以上は答えずに再び歩き出した。あぁん待ってぇ、とお燐の追従。
 実のところちょっと嘘だった。好き好んで勉強などしやしない。外界をお散歩して、瞳に映る玲瓏たる活劇を味わうだけ
で心は満ち足りていた。知識なんてものはその副産物みたいなもので、自然と服の生地に染み込む、水のようにこいしの心
へ吸い付いてきた。能動的とか受動的とかという区別では測れない。まして人の心を見るとか関係ないし、難しい御本を読
んで勉強して手にする知識に必須不可欠なものなんて一つもない。概ねは贅肉みたいな知識で、さりとて無益とは必ず言い
切れない。今日や昨日の勉強なんて、それだけのことだった。
 ただ一つ言えることに、姉が出歩かない広い広い場所で、誰かが諭すでもない言葉ならぬ知識を蓄えることはこいしには
痛快極まりなかった。そのことがこいしを突き動かしてきた無意識の衝動だったし、動機と言えば一番の動機だ。果てさて
知識欲とまで称される崇高なものかどうかはさておき、地霊殿に籠もりきりでは得られなかったいくつかの事象を確実に手
中に収めて、感じていたのは確かな満足、大満足である。
 不意に霊烏路空とすれ違った。
 長い苦闘の果てでとうとう見つけたらしき醤油煎餅に、品のない音を立てながら齧り付いている。白い煎餅の欠片が口許
ぱらぱらと零れ、飴色の床板へ雪のように散ったのを誰も拾ったりなんかせず、お空はあちらへ。こいしはこちらへ。
 そして、お燐はこちらへと歩き進んで廊下はやがて煎餅以外の無人となる。

「いいこと教えてあげる」
「?」
「お馬鹿なふり、しときなって」

 そう言われた途端に、やっぱり不安になった。

「やっぱ…………そっちの方がかわいい?」
「女の子は隙があった方が可愛い。あ、」

 ふとそこでお燐は立ち止まり、洗面所のほうを指さした。
 先ほど啄んでいたキャットフードが頬のあたりについており、こいしがうん、とひとつ頷く。
 てくてくと水桶に歩いていって、ばしゃばしゃと顔を洗い始める猫。

「隙……かわいい……か……」

 隙? 好き?
 あっれ、どっちだろ。
 赤い瞳をそっと撫でた。胸でまぶたを閉じている、自分の、へんな形をした三つ目の瞳。
 非常に都合の良い考え方で、こんな時には人の心を読める方が便利だと思った。仮令それで得られる誰かとの古明地恋し
や和気藹々の和睦がつまりはまやかしだとしても、手元に残る財産があるならマシじゃない、って?
 外を徘徊して、あれこれそれどれと知識を身に纏ってみた。外界は、陽が昇れば陽も沈む正真正銘お伽の世界。地底の世
界とはまるで違う光景が広がっていた。夢も現実も乱舞する光彩陸離のお伽の国まで何往復も行きつ戻りつこの私は、何を
一体手に入れて何時間過ごしたのか? そして地霊殿に戻ったのか?
 ためしに第三のまぶたを開いてみようとした。
 固い。
 自分の耳たぶが自分では動かせないみたいに、それは確かに自分の身体だというのに不随意で、てんで言うことを聞いて
くれない。ずっと前からこうだけど、ぎーぎーこじ開けると多分痛いのでこいしは極力触れないようにしている。いつか自
然に開くならそれはそれだし、いつまでも開かぬならきっと自分がそう望んでいる証左になるのだろうと思っていた。
 いっつもいっつも瞼は重い。
 心の瞳を閉ざして以来、毎日が眠すぎたのでこいしは外を歩いた。
 歩いてれば眠気覚ましになるからだ。
 食べすぎた料理の反動で知識という贅肉が肥え太って、さらに食べ過ぎの反動でまた眠気が襲ってきても、

「私は、やっぱり」

 誰かを見返す意味も、
 誰かに隙を見せてしまう意味も、
 誰かに好きだと言われる意味も、
 姉が知らぬ知識を蓄積することそのものの意味も、
 確かめてみるには、地霊殿という屋敷の照明がちょっと暗すぎたのだ。こいしの三つの目にとって、地霊殿はいつでも明
るくない午後だった。 
 見えない縄に縛られてるみたいで居心地が悪い。
 外には美しい物が山とあり、楽しげな人妖も山と居り、七珍万宝が二本足で歩いているすっごい世界。
 たとえばあの物臭っぽい姉と利発げな妹の生き様に本質的な優位と劣位があったとして、それを気に病んで傷つくような
か弱い姉ではあるまい。
 こいしは、確かにそう信じつつも――
 今日を振り返ればこいしの胸に、どこか姉の寝首を掻いてしまったような、居心地の悪さが芽生えてしまうのだった。
 
 人に嫌われるのが嫌で、私はこの瞳を閉ざした。あれから何年経っただろう?
 それなのにまだ――こんな私のことを、誰かが「可愛い」と言ってくれるか。

 お燐の洗顔が長引いているので、軽く無視してこいしは一人で歩き出した。
 外界の俚諺に依れば、明日の天気はつまり雨だという。
 こいしはこっちへ歩き、お燐は程なくあっちへ歩いた。

 姉の古明地さとりはところで、雨を見たことがあるのだろうか?
 ちょっと考えてみよう。
 …………うーん。



 たぶん、無いよなぁ。



■ ■


 
「明智光秀が織田信長をぐーで殴ったのは!」 
「それは……本能寺の変っ」
「さとり様、すごいです!」

 肘つきして、霊烏路空は彼女らのやり取りを従容と見守っている。先ほどから彼女らのやり取りに部屋の空気を一任して、
空自身は一言も口を挟んでいない。
 挟む気がないのだ。振り子時計の音無き音が微か規律的に、止め処ない時間の無駄遣いを大黒柱で刻んでいる。空は結局
おやつを発見出来なかった敗北感を噛み締めながら、眼前、火花の散るような茶番劇の駄客と成り果てている。

「三倍角の公式は?」
「三振して四番散々。」
「さすがぁっ! さとり様、無敵ですっ」

 はてさて、この絡繰りを知っているのは霊烏路空のみという間抜けな構図である。先程から幾人の戦国武将が討たれたで
あろう? 何人の科学者や数学者が古明地さとりの前に涙を呑んだであろう? 幾多の戦争の歴史が年号つきで彼女の口に
より諳誦されたが、霊烏路空の感覚からすると戦争というのは、ほんの些細な勘違いや行き違いの積み重ねで起こってきた
ものが大変多い。
 勘違いが積み重なれば、あり得ない事実が起こりうることもあるのだ。

「くっ……電気抵抗の法則を発見したのは!」
「オームよ」
「イヤヨが六つ、184+184+184+184+184+184では!?」
「『イイワヨ』で1104」
「きーっ! 鎌倉幕府の将軍と御家人の主従体系、それぞれの役割を四字熟語で」
「新恩給与と本領安堵!」
「だーっブラジャーを最初に着用したのは!」
「エルミニー・カドル(仏・1889)が考案しメアリー・フェルプス・ジェイコブ(米・1912)が最終原型を特許申請」
「なんでそんなことまで知ってんですかっ!?」
「アンタが心ぜんぶ読まれてるからでしょっ!!!」

 我慢限界。
 とうとう堪えきれなくなった空が、お燐の後頭部にツッコみを入れた。
 水を差されたさとりが不満そうに口を尖らせる。要するに問題を出す人は当然答えも知っている。心を読めるさとりにと
ってはこんなの正答表が黒板に張り出された状態で受けるペーパーテストみたいなもんで、明かしてみりゃタネなんてそん
なもんなんだ。
 しかしそこは鳥頭の霊烏路空でも気付く摂理、よく考えりゃこの猫ぜんぶ答えを知ってたからこそ、さとりに胸の内を読
まれて全問よどみなく解答されてるわけで、
 ――ほんとに何者だろね? この猫は。
 一体どこで、ブラジャーのことまで。

「ねぇ、うつほ」

 機械みたいにさとりが呟く。

「何でしょう」
「お燐死んだんじゃない?」
「うにゅ?」

 死んだかもしれない。
 ヤタガラスをごくりと呑み込んでみたは良いものの爾来、身体そのものの調子はさておきルックスの可愛さもさておき、
この左腕が無駄にでかくて厳つくてついでに固くて困る。昔とった杵柄で馴れ馴れしくツッコんでみるのは良いが、こちと
ら今が杵柄そのものである。
 主に腕が杵。
 昔ながらで、うっかり手加減無用の本気で殴ってしまった。
 厄介な身体なんだからなぁ、地霊殿という場所はもう満足にツッコミさえ入れられない。

「おーい。悪い悪い、生きてるかー?」
「…………きゅう。」
「ところで」
「?」

 お燐の死亡を確認できたところで、空はさとりに向き直る。
 きょとん、と首を傾げる古明地さとり。そういえば、こうして二人きりで向かい合うのはちょっと久しぶりだ。何だか無
闇に緊張する。
 緊張した口調で問うた。

「……さとり様って、本当に三画以上の漢字読めないんですか?」
「読めないわよ」

 うわっ、あっさり断言されてもちょっと困るのに。
 どぎまぎと一層心音を高鳴らせる空の傍ら、さとりは紅茶のカップを持ち上げ、口をつけてからその中身が空っぽなのに
ようやく気付き、

「だってさぁ。平仮名だって概ね三画以内じゃない? それ以上の文字なんて最早文字に見えないもの……」

 ソーサーに戻して、傍らに置かれている分厚い本を枕にして肘をついた。
 そして恋に悩む少女のような、肩が下がるくらいの大仰な溜め息をついた。
 どきどきしながら、空はさとりの純真無垢で穢れを知らないその瞳と、足許に転がるお燐の安らかな死に顔を交互に見つ
める。
 そうしてると色んなことを思い出した。
 色んな理不尽がまかり通ってる屋敷にえらく長い年月住んでるもんだと、気付けば感慨深い。何かというとこいしは外を
ほっつき歩きたがるが、外に行かなくたってこの屋敷にゃ色んな不思議がある。例えば古明地さとりという人は、未だにも
って得体が知れないところがある。
 付き合えば三年くらいならあっという間だけど三画の字なんてもっとあっという間で、その理屈で行けば「ぼ」とかは最
悪読めない字の範疇に入るんじゃないか? なんて、何だか空の方が緊張する。三年間の付き合いも短い短い。まだまだ不
思議が眠っている地霊殿という屋敷である。

「ちょっとは勉強しようと思ってるんだけどねえ……」

 手許に置かれていた分厚い本を肘つき台の役務から解放し、さとりはそれを重たげに広げた。膝の上に載せ、今ひとつ焦
点の定まらない瞳を漂わせている。
 正対している空の目に、その赤茶けた背表紙がちらちら映り込む。
 空は目を凝らし、かなり長い時間を掛けてその文字を読み切った。
 こう書いてあった。
 新訳、漢、字、辞、典。

「って漢字辞典持っててその漢字力!? 奇跡! ありえねぇくらいのミラクル!!」
「うるさいわねえ――」

 羽根をばっさばっさ揺らしながら騒ぐ空に、じっとりとした批難の目つきが送られる。その八寒地獄のような冷たい視線
に射竦められて「……うにゅう」と口から思わず一言零れて、なんか力が抜けて羽が萎びて、空はその場にへにょっと座り
込んだ。
 いたたたた……と、お燐が地獄の一歩手前から意識を取り戻し始めて半身を起こしかけたところで、その腹の上に力の抜
けた霊烏路空がとすんと座る。
 「おう゛ぇっ」と声がして、お燐が再び地獄に飛んで帰る。
 古明地さとりが、仕方無げに呟いた。

「……ずいぶん前に、こいしからもらったのよ」

 はぁ。
 そんなこと言われましても。
 ぽつねんと、空は所在なく座り込んで動かないでいる。返す言葉も見つからなかった。
 周囲に、沈黙が降りた。妹がくれたという漢字辞典を忌々しげに読みふける古明地さとりと、思えば長居となった地霊殿
に思いを馳せる今日のヤタガラス、あともう死んだけど火焔猫燐。
 忘れちゃいけないんだなあ。
 空がそっと微笑む。
 色んなのが居るよ。地霊殿には他にもたくさんのペット達が居るし、空もお燐も毎日元気で、
 何よりもう一人――そう、滅多に帰って来ないけど、見忘れちゃいけない人が確かにいる。
 毎日明るくない午後だけど、
 ――どうやら、地霊殿という場所で営む今の生活は、満足できるくらいには結構賑やかっぽげだ。

「…………な!!!」

 ばたん! と、大きな音が上がった。
 いきなりさとりが飛び上がるように席を立ったものだから空もものすごくびっくりして、座ったままお燐のお腹から思わ
ず飛び退いておっぱいの上に尻餅ついて、後ろ手をついたのはよく見りゃ顔の上だった。
 立ち上がったさとりの瞳は、一体どうしたのか漢和辞典のページに釘付けとなっていた。
 驚愕に見開かれている。

「あった……あったわ!」

 ふむ、あったらしい。
 なにがあったんだろうね? その漢和辞典の中に。
 霊烏路空にはよく分からなかった。分からなかったが御主人様にとってめでたいことがあったことは確実な情勢なので、、
一応その笑顔に笑顔を返してみせる。
 ついでの仕事で、お燐も合わせた今の三……四人で、棲まい続ける地霊殿のリビングの幸せを、ほんのちょっとだけじゅ
わっと噛み締めてみましょう。
 どことなく、温かい気持ちになれる。
 しぬー、重いーしぬー、と掠れた声が手の下から聞こえる。この体温がたまらない。

「……よくわかりませんが、とりあえず見つかって良かったですね。さとり様」
「ええ、良かったわ」
「……何が良かったって?」
「………………きゅう。」

 こんなにも変な奴が、この屋敷には四人もいる。



■ ■



 意を決して、もう一度居間の暖簾の前に立つと中からえらく楽しげな声が聞こえて、こいしは拍子抜けした。
 暗かったんじゃないの?
 急変に首を傾げつつ、同時に仲間はずれにされたような気がして理不尽な不満を抱きつつ、こいしはそっと暖簾に手を掛
けた。

 きみらはみんなばかだっ。
 そうやって全ての卓袱台を引っ繰り返して堂々退場するのは簡単だけど、それで今日の出来事を解決しないあたり我なが
ら、成長できたのかなとは思ってる。外界で得てきた知識の一つひとつをよぉく吟味してみるとどれもこれも人生において
どうでも良い物ばかりであるが、正解と不正解で表されない知識もこの世にはあるのだ。目下、知識そのものが価値なので
はなく、知識を身につけるというその一連の行為そのものが価値なのだ。
 胸に蟠る不安感の正体が何なのか、まだはっきりとは分からない。
 それをはっきりと知ってしまうことが、少し怖い気もした。私にとっての外界が言葉以上の意味を持つ時、ないし、姉が
何かにつけて寄越す種々のペット達がペット以上の意味を持つ時、恐らくは――この第三の瞳に、ある意味で取り返しのつ
かない変化が起こる。
 その結果として魅力的な古明地こいしが生まれるかどうかは分からないし、今しがた嘲笑したばかりの姉のような、この
屋敷のような、光乏しき隠居生活を営むようにならないとも限らない。思考のパズルがどこでどんな風にピースを組み合う
かは分からないし、どんな絵柄のパズルが完成するのかも分からない。
 ただ――どうあっても良いや、と、今こいしは思う。
 胸の瞳を閉ざして以来眠たすぎる毎日に、そうやって眠気覚ましをぶっかけることでいずれにせよ、違う光が射し込んで
くるだろう。

 地獄の光熱は太陽の光熱と実は同じなんだと、とある妖怪からそんなことを聞かされた。
 それが本当ならこの地霊殿にも、いずれ青空が広がるのだろう。
 もたらすのは、是非私でありたい。
 痛快極まりない私の野望は暗中模索ながら、この暗い地下の底における黎明でこそ、真の意味で達成されるのである。と
りあえず微分積分はしばらく放っておこう。
 
「……何が良かったって?」
 
 さとりと空が、同時に振り向いた。
 思えば姉と「会話」をするのも、大変久しぶりな気がする。
 
「うふふふ……良いところに来たわねこいし」
「……」 

 なるほど、不思議な閉塞感の正体は姉の胸と私の胸、双方の瞳の違いか。
 これは会話と同じだね?

「さぁ! これをご覧なさい。四画の漢字ですよ」
「あの、さとり様」
「空は黙ってなさい」
「みゅ……」

 キャッチボールなのだ、絆というのは。
 会話も、あとクイズもそうだ。
 ちぐはぐの方向に投げ合っているだけのボールじゃキャッチボールにならない。会話不成立、クイズも不成立。
 あっちは瞳をひらいてるのに、こっちが瞳を閉じてちゃフコウヘイ。

「このフリップの漢字は、一体何と読むでしょう!?」
「…………」
 
 どこから取り出したのか分からないフリップが、たった一字の漢字をその表面に踊らせてこいしに勝負を挑んでいる。
 その一字を、こいしはまじまじと見つめた。
 ぐねぐねしてて素直じゃない、不思議な漢字だ。じーっと見てると、本当に漢字じゃなくなって見えてくるから不思議だ。
 同じものをじーーーーーっと見続けるのは、やっぱり、自分の眼に良くないと思う。

「…………らない」
「え?」
「…………分からない」
「え? 何、それは多分もう一度大きな声で言うべきことじゃないかしら古明地こいし!」
「わ……分からないなー! 私わかんない!」

 姉妹だからって必ず仲良くしなきゃいけない、なんてことは全然思わない。ただこの世で唯一、私と同じように三つ目の
目を持ってる人とせっかく一つ屋根の下に住んで、歩調を乱したまま生きてゆくのはとっても損をしているように感じる。
 そして三つ目の瞳と、ある意味では上手い具合につきあって生きている古明地さとりは、それなりに姉としての威厳を無
言で見せつけてきている気がした。
 主に私に対して、である。

「わ、分からないの!? あ、あは、あははははしょうがないわねえこいしったら、こんな簡単な漢字が」
「……ぐ」

 うーん。いやはや、思いっきりぶん殴ってやりたい。
 こっちがバカのふりをしてるからって図に乗りやがる。まぁある程度昔みたいに姉妹の関係が近づけたら、被ってた猫の
皮をいきなりバリっと突き破って、ものすっごい学識を馬に喰わせるくらいまくし立てあげてこのバカ姉を絶望のどん底に
叩き落とすのだ。この野望も実に悪くない。
 今はそのための、屈伸運動の屈の部分だと思っておこう。
 ……おねえさまと仲良くして、いずれ今とは違う世界を、二人で見るときのための。



「では教えてあげます。この漢字は……『こころ』、と読むのですよ」
「あは、すっごーい! わたし読めないよ、おねえちゃん!」 



 こいしはその胸に、青空を想い描いていた。
 空に色があるあの世界に、あともうちょっとで手が届く。
 いつしか姉と二人で空の下を歩く日が来たら、そのときはきっと、この三つ目の瞳にも目映い光が映り込むんだろうなと
思う。
 その時は三つを飛び越えて、
 二人で四つの瞳になる。

 それが良いことなのかどうかは分からないし、そのためには私にも相手にもかなり課題が多いけど――



 うん、まあ、楽しみにしていましょう。 


(了)





 初めて書いた地霊殿SS。そして現時点で、拙作唯一の古明地姉妹SSです。
 周囲でも呟いてる人が多いですが、古明地姉妹はSSに書くとなると色々難しすぎて。

 でも二人とも物凄く魅力的なキャラクターなので、いつかもっと壮大な物語を書いてみたいなーと思います。その時は、こんなヘキサゴ○に呼ばれちゃいそうなお馬鹿さんじゃなくて、もっと洒脱なお姉様として描いてみたいです。
 この作品は元々短編として書くつもりで、それが長くなってしまったものなのでちょっといびつな感じがします……。
   
(初出:2009年2月11日 東方創想話作品集69)