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【幻想の郷】


 秋の太陽が西の山の稜線に滑り落ちていくのを、咲夜は見つめていた。


 「…」
 シャッ――


 その太陽が完全に沈みきらぬ内に、咲夜は苛立たしげに自室のカーテンを閉めた。
うっすらと夕焼け色が差していた部屋が、元の色を取り戻す。

「…」





 彼女は夜が嫌いである。
世界を照らし出している太陽が沈めば、闇が世界を支配する。彼女はその闇が嫌いだった。

 彼女は時を操る者。世界が見える限り、時を操れば大抵の不安や脅威は解決出来る。
しかし…夜闇が世界を包んでしまっては、時を止めたとしても彼女にはどうすることも出来ない。
相手の時を止めても、それを制することが出来ないからだ。

 勿論、それで敵を恐れるほど、彼女は自分を弱い人間だと思ってはいない。
 しかし、闇とは、見えないから闇なのだ。闇に紛れれば全ての存在も、時の流れも視界から消えてしまう。
結果、彼女程度の力は簡単に意味を失ってしまう。




 彼女は、夜が嫌いであった。
 夜の力に抗う術を持たない自分が嫌いであった。






-----

  「柄にもないコト」

 不意に、背後から声が聞こえた。

  「お嬢様…」




 また自分の中で嫌悪感が湧き上がるのを、咲夜は感じていた。
急に声をかけたレミリアに対してではない。通りすがって廊下で見ていた自分の主人に気付かないほど、
夜に思考を取られてしまっていた自分自身にである。


  「夕食の支度でしたら、今から…」

  「夜が嫌い?」



 咲夜の言葉を遮り、悪戯っぽい笑みを浮かべて目を細めたレミリアがつぶやく。

  「最近のお日様はつるべ落としですから、早めに閉めただけですわ」

あっさり自分の本心を見透かしたレミリアに、しかしさして驚きもせず咲夜はその言葉を適当な言い訳で受け流す。

  「何も見えないことは恐怖だもんね?」

 言葉を続けるレミリア。



 やれやれ厄介なところを見られたものだ、と、咲夜はため息をついた。
いや、実際には心の中でそんな気持ちになっただけであるが、お嬢様のことだ、そんな心もお見通しだろう。





  「闇なんて、排除するもんじゃないわ。あれは楽しむべきモノよ。」

  「そりゃあお嬢様は、日光の方が怖いでしょうから」

  「貴方は人間だもんね。夜が恐怖でも仕方ないか。」

  「この屋敷の中では、むしろ昼の方が闇が濃いですけどね」

  「良い?咲夜。闇の中身なんて、妖怪にだって見えやしないわ。だけど、それを恐怖に思うのは人間だけ。


   なぜか分かる?」





 レミリアの目が、いっそう悪戯っぽくなる。

  「人間は妖怪ほどの力を持たないからですか」
  「違うわね。人間は妖怪よりバカだからよ」



 間髪入れずに答えた咲夜に、さらに間髪入れずにレミリアがそれを打ち消した。


 「それも心得ております」

 そう言う咲夜に、分かってないわ、と言いたげに、レミリアは目を閉じて首を振った。
そして、天井を見つめて、諭すような口調で語り始めた。





  「人間の知識は素晴らしいわ。知識だけじゃない、それを求める力も、生かそうとする努力も。

   だけど、生きとし生けるもの、出来ることに限界があるわ。人間も妖怪もね。
   人間が知識を生かそうとする努力は素晴らしいけど、人間はその引き際を知らなさすぎる。

   どんなことでもいつかは出来ると信じ、どんな謎もいつかは解明出来る、その力が自分たちにあると思いこんでる。
   それこそが愚かなの。」



 咲夜は、レミリアの言葉を理解しつつ、彼女の真意を掴みかねた。

 言葉を出せずにいる咲夜をちらっと見やり、レミリアは続けた。



  「人間は、闇の中にあるモノを、見えうるモノだと無意識に信じているわ。咲夜も例外じゃない。
   何とかすれば見えうると思うからこそ、その中にあるモノを見透かそうとする。

   そして、見えうるのに見えないという無力さの実感から、そこに自分たち以上の巨大な恐怖を投影してしまうの。
   想像するよりもずっと恐く。それよりもさらに恐く、さらに恐く…と、無限にね。
   そして、それで自らをがんじがらめにして苦しめる。
  
 

    妖怪はそんなバカじゃないわ。自分たちが出来ること、干渉出来る世界の広さくらい、みんな自覚して生きている。
   考えてご覧なさい、夜だって昼だって同じよ。周りの世界が明るくても、所詮明確に理解できるのは、
   自分の視界の世界だけよ。目に入らない場所、耳に聞こえない音、そんな物は、例え日が当たっていても
   夜とちっとも変わりないわ。

    分かり得ない場所、「闇」なんて、当然存在するのよ。  
   私たちは、闇の中にわざわざ巨大な恐怖を投影したりしない。どうせ見えないなら、都合の良いモノを投影すればいいんだもの。
   美味しそうな人間でも、気さくな仲間達の百鬼夜行でもね。」












  「はあ…
   人間でそれが出来るのは、頭が春な巫女くらいですわ」







 やや間を置いた咲夜の切り返しに、レミリアはクスッと笑った。



   「そうね。でも、だからこそあの巫女は、数多の妖怪と渡り合っていけるわ。

    彼女は、有り余る能力を持つが故に、逆説的に人間の限界を知っているの。
   金持ちや権力者ほど、いざというとき自分の無力感に気付きやすいのと一緒ね。

    彼女はそれ故に、無駄に巨大な空想の恐怖感を創り上げたりしないわ。
   人間など及びもつかない恐怖が存在していることを、既に彼女は理解しているから。」



 咲夜はしかし、それでも釈然としない。


 「存在してると知っているなら、尚更恐怖を覚えるのでは?」

 「貴方自分で言ったじゃない。あの巫女は頭が春だって」


 レミリアの放ったあっさりした一言に、一本取られたとばかりに、咲夜はうつむいて小さく苦笑いする。
 しかしその咲夜と対照的に、レミリアは真剣な表情になった。





  「でもね。人間がバカな理由は霊夢のそれじゃないわ。むしろそれは私たちに近い。
   恐怖という概念を投影することも、人間の場合実はそれ自体は間違っているんじゃないの。
   そうじゃないと、私たち妖怪との棲み分けが出来ないしね。



    じゃあなぜバカなのか。そこから先の進み方が愚かなのよ。
   人間は恐怖を創り出した後、なお強引に、力業で恐怖を消し去りにかかる。

    いつしか時代が流れるにつれ、暗い道には街灯が付けられ、宇宙には衛星を飛ばし、
   そして遠く離れた人との会話さえ強引に自分の思うままにした。

    周りが暗くて見えない恐怖、距離が遠すぎて見えない恐怖、離れてしまって、直接会話出来ない不安。
   人間は、次々と自らが生み出した恐怖を、自らの手で片づけてしまう。」


  「はあ…何でも無理に実現しようとすること、それが思い上がりなのですか?」
 咲夜はレミリアに問う。





 「半分不正解ね。」


 不意に反対方向から声がした。







  「その行為そのものは誉められることよ。そうやって技術や知識を身につけていけばいずれ全てが解決出来ると思っている、
   その考えこそが思い上がりであり、世界の真理が分かってないということなのよ。」

 紫色の髪を払いながら、その知識人はレミリアよりも優しい口調と顔つきで歩み寄り、話に割り込んだ。



  「パチェがのってくるとはね」
  レミリアが意外そうな声でつぶやく。
 
  それを尻目に、パチュリーは続ける。


  「人間はそうやって、知識を、技術を蓄えてきたわ。
   それ自体は構わないことなの。だけど、それでも分かり得ないモノ、出来得ないコトは沢山あるわ。
   妖怪と人間の違いは、それを楽しむか楽しまないか。」

  「本を読み漁ってる奴のセリフじゃないね」

 すっかり会話を取られてしまったレミリアが茶化す。



 咲夜は向き直り、パチュリーを見つめた。


  「無知の知、ですか」

  「4分の3不正解ね」

  「残念さっきより遠ざかってしまいましたわ」

  「どうせなら、分かりきれないモノは楽しめ、というコトよ。
   暗い街に街灯がついても、昼間の明るさになる訳じゃない。
   宇宙に人や機械を送っても、宇宙全体なんて到底知り得ない。
   メエルなんてシステム、書いてる人が本人の気持ちまで分かりっこないわ。


    分からないならば、それらを楽しく空想すればいい。
   宇宙の先には、大文明があるかもしれない。メエル書いてる人はきっと私を慕ってくれてるに違いない。

    …闇の中は、気の良い妖怪達で一杯に違いない、ってね。」



  「パチェもたまには良いコト言うもんね」

 うんうんと頷くレミリア。
 その声を無視し、パチェは咲夜をまっすぐ見て言葉を続ける。



  「人間はそうしなかったわ。創り出した恐怖を勝手に膨らませ、その上でその恐怖を取り除くことに躍起になった。
   その恐怖たる妖怪はそれを見て、人間と上手くやっていくことを基本的に諦めたの。

    あの娘もね…」



 あの娘…?と訝しむ咲夜に構わず、パチュリーは続ける。 



  「妖怪だけじゃない。木火土金水、世界の全ては夜闇の中で生きているわ。
   私たちが楽しい想像をかきたてられるくらいに、十分にね。


    …妖怪に囲まれてる貴方達くらいは、その楽しさに気付いて欲しいものだけど。」


 そう言ってパチュリーは、少しだけ笑った。



 「はあ…」
 分かったような分からないような、そんな返事を咲夜は返した。




 と、レミリアがひょいっと上体を突き出して、咲夜の目の前に顔を持ってきた。

  「貴方だからこそ言うのよ。
 
   貴方は、人間とも妖怪とも違う時を生きるわ。
   貴方に流れる時間は、妖怪も人間も干渉出来ない。時を止められても、止められた方はわからない。
   貴方の時間は、誰から見ても掴めない。貴方は、誰から見ても夜なの。」

  「…」

  「誰から見ても夜だけど、誰からも見えないその夜の中で、貴方は動き続ける。
   貴方は、夜に咲く者なのよ。




    だったら、闇の楽しみ方くらい、覚えておかなきゃね?」


 話の最初に浮かべたのと同じような悪戯っぽい目つきで、レミリアは笑った。




  「…心に留めておきますわ」
 咲夜はそう答えて、食事の準備に向かおうとする。その背中にパチュリーが、最後の一言を投げた。






 「そう、貴方のためにも…ついでにあの娘…あの鬼のためにもね。」








------
 ここは静かな昏い森に佇む紅魔館。

 食事を終えた咲夜は、自室のベッドに腰掛けつつ、さっきの会話のことを、
そしてあの酔鬼のことを考えていた。
 そしてあの陽気な顔を、カーテンを開け放った窓の向こうの夜闇に映し出していた。




 あの鬼との悶着を収束させた後、咲夜は図書館に足を運んだ。鬼についての調べ物をするためであった。

 咲夜は、その時のパチュリーの振舞いを思い出していた。
彼女は、咲夜が教えるまでもなく、あの時の宴会騒動が鬼の仕業だと気付いていた。

 そして、その事だけ告げて、他は何も教えてはくれなかった。
咲夜自身、膨大すぎる資料から満足な情報を探し当てることが出来ず、結局その件はうやむやに終わっていた。


 深い暗闇に目をやりながら咲夜は、なぜあの時パチュリーがあのような態度をとったのか、
少し分かった気がしていた。






 「闇を楽しむ」というロジックが、多くの人間に欠落していることは事実である。
肝試しなんて遊びがあったが、アレが辛うじて、お化けという恐怖を念頭に置いて、闇を楽しんだものだ。

 しかし現代…鬼やお化けは人間にとって、もはや乱獲の対象でしかなくなっていた。
咲夜自身…弱気でもないのに、「闇」というものを無意識に「恐怖」であると認識した上で、
カーテンを引いてそれを「排除」していた。彼女自身、鬼を乱獲する立場だったのだ。




 パチュリーはそれ故に、あの鬼のことを告げなかったのだ。



 別に、見つかればあの鬼が殺されるとか、そういう浅い理由ではない。
鬼が恐怖であること、そしてその先にあるべきものを、咲夜自身の足と目で知って欲しかったからなのだ。



 人の恐怖心の象徴であるあの鬼が引き起こしたことはといえば、毎晩のような賑やかな宴会だった。



 何者か分からない奴が引き起こす楽しい事件という、一見訳の分からない、しかし実は妖怪が知っている
「人生の楽しみ方」を、無茶苦茶な手段で体現してくれたあの萃香という鬼。


 得体の知れない奴が引き起こしうる、楽しい楽しい幻想。




 それこそが、図書館で調べ物をした時の、パチュリーの淡泊な態度の理由だったのだ。


 …まあ勿論あの大人しいパチュリー様のことだ、
そうは言ってもあの騒動の主を、迷惑だと思っていたのは間違い無いんだろうけども。







 「まったくお節介ね、パチュリー様もお嬢様も」


 たわいない独り言をつぶやいて、咲夜は窓辺に立った。

 月明かりでうっすらと浮かぶ山の稜線。その山に何が棲むのか、どんな草木が生えているのか。
今頃あの池の向こうで、百鬼夜行かしら。今頃空では、チルノとレティが冬支度かしら。

 咲夜の中で空想は未だ、恐怖が内包されている闇への、緩衝材としての空想という域を出ないが、
でも、それが紛れもない第一歩なのだろうと、彼女は勝手に理解することにした。




 知識や技術が成熟した時代にあって、この世は今なお分からないこと、出来ないことだらけである。
 それでは、それらの疑問や不可能が解決された時、世の中に幸せは訪れるのだろうか?


 例えば頭に付けるだけで空を飛べる竹とんぼや、開けてくぐれば目的地に着いているワープドアが作られたとして、
それは人を幸せにしてくれるのか。



 彼女には分からなかった。

 分からなかったけど、
知らない方が楽しめる、出来ないから楽しめるコトもあるということは、今日理解出来た気がしていた。



 「知らないこと」は多々生じる。それに伴って、人間は恐怖を感じることもあるだろう。
そんな場面で、知らないが故に色々空想することって、ちょっとだけ楽しいかも…そんなことを思っていた。

 知ってしまっては、出来てしまっては、もはや空想の余地もない。
知らない、出来ないお陰で、そのモノは無限大の広がりを見せてくれるのだ。

 

 「ホント、お嬢様の言うとおり。柄にもないわね…」


また独り言を漏らして、咲夜は夜を笑った。









 吸い込まれそうな闇。それを見つめる一人の小さな人間。
 彼女は、しばし抱いていた沢山の疑問のいくつかに今日、答えを見つけた気がしていた。


 あの鬼が、宴会騒動を起こした理由も。

 パチュリーが、鬼のことを教えてくれなかった理由も。

 霊夢が、あんなに柔らかな日常を送れる理由も。



 そして、パチュリーが、本を読みふけってもその知識をおおっぴらに活用しようとしない理由も。








  しかしその中で、彼女には一つだけ、どうしても分からないことがあった。






 「闇」というモノに対し、なぜ妖怪はたやすく「楽しむモノ」という結論に達し、
なぜ人間はわざわざ苦しい道である「恐怖は排除するモノ」という印象を持って成長してしまったのか。






 お嬢様は、闇というものは人間妖怪に関係なく、双方に存在するものだと言った。
ならば何故、人間だけが目先しか見ない楽観主義に走り、一人で怖がって一人で騒いでいるのか。

 何故人間は、そんなつまらない思考を身につけてしまったのか。



 人間と妖怪の能力の差か?いや、それはお嬢様が否定していたっけ。

 妖怪は長生きだから?いや、長生きなんてのは所詮人間の価値観に当てはめているだけに過ぎない。




 …首をかしげながらそこまで考えて、彼女は答えを求めるのを止めた。答えはきっと、私の周りにいる
あの妖怪達を見ていればいずれ分かるのだろう。分からなければ、空想すればいい。



 咲夜はそう思い直して、改めて夜の闇に目をやるのだった。







  「ちょっとぉ〜、何よこんな時間に」

  「何言ってるのよ、私たちの時間は始まったばかりじゃないの」
 
  「早すぎるって言ってんのよ」
 
  「そうですよ、叩き起こされる私の身にもなって下さいよ〜」
 
  「貴方まで何言ってるの。この世界に居て夜寝てるのがおかしいのよ。
   早朝…いえ、早夜を楽しまないと損じゃないの」

  「夜は本来眠いんです。私は半分人間なんですよ〜」

  「半分は亡霊だわ」
 
  「亡霊なら、ノコノコ顕界に来るんじゃないわよ」




 
 不意に階下から騒々しい声が聞こえた。
来客… あの声は、白玉楼の亡霊お姫様とその従者か。
支度せねば、と部屋を出たところで気配を感じ、ふと足を止めた。






  「欣求浄土か…そうね、人間だって完全にバカでもないのかもね」




 そこにいたパチュリーは幽々子の声のする方を見やり、微笑みながらそれだけ、ぽつりと咲夜につぶやいた。
そして、階下の客人を見やることもなくまた図書館の方へ戻っていく。

 咲夜はそれを茫然と見送り、そして階下を見やる。






 人間は、現世の安寧を、往々にして宗教に頼っている。


 欣求浄土、すなわち死後の世界を素敵なモノと思い浮かべる行為は、
何も死後の世界に期待することが主目的ではない。
 死後の世界は素晴らしいと仮定し、そこに行くために現世で徳のある人生を送ろうとするのが、
そのココロである。

 人間は、生きている内には死後の世界など判りようがない。それに対し人間は、
死後の世界を昇華させることで、現実世界を楽しく、有益に生きようとしてきた。

 自らの無力を悟り、それを自らの人生の徳とする道。






  「人間にしては、賢かったのでしょうか?」






 廊下を遠ざかっていくパチュリーの後ろ姿に向かい、咲夜はそう問いかけた。

 パチュリーは足を止め、しかし振り向きもせず、一言だけ言った。




  「夜寝る奴らが、なに言ってんのよ」






 咲夜はその返答に、さっき部屋で見つけることが出来なかった、最後の疑問の答えを見た気がした。









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  「咲夜〜」

  「あ。はい、ただいま!」



 お嬢様のお呼びに咄嗟に答え、彼女は客人の元へ走り出す。


  「妖怪は夜起きてるから闇と向き合えた…
   人間は暗い時間は不便でその時間寝ることにしたから、闇に対し …って、本当かしらね」


 あまりに単純すぎる考えに思わず自分で笑いつつ、それに正解とも不正解とも判断を与えぬまま、
彼女は改めて、この妖怪達と一緒に、楽しく生きてみることにしたのだった。



 解決すべき疑問と、解決すべきでない疑問。

 人間と妖怪は、基本的には水と油…いや、光と闇である。

 境界線を踏み越えられるかと言うと、不可能である。それはきっと、人間の思い上がりだ。





 ならば、全てと共に生きてみよう。

 正しく分かり合うなんて絶対出来ない奴らと、そんな彼らへの有り余る幻想と共に。




 それでこその人妖混じり合う郷。

 それでこその幻想郷。



                                  《完》




 処女作です。
 ぜんぶここから始まりました。

 なんだかんだで一作目らしい一作目というか、恥ずかしい部分もありーの今の私に通じる部分もありーの、見返してちょっと面白い作品です。主に私が。
 そろそろ丸4年になりますが、この頃にデビューした方と知り合ってみたり、一緒の本に作品を並べたり、やはり現在と地続きになって色々と繋がっているのです。色々と。
 思い起こせばこの頃は確かメモリ256MBのノートパソコンで書いて、一瞬だけどフロッピー(!)に保存してたような記憶が――ひい。道理で私も歳を取る訳だ!

 ちなみにこの作品が創想話検索で引っかからないのは、当時私のペンネームが「hangon」というアルファベット表記だったからです。
(初出:2005年10月17日 東方創想話作品集20)