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【E気持】



 最近、体のキレが悪い。
 咲夜はそう感じていた。





 訳あって咲夜は、冥界の白玉楼で弾幕ごっこに興じている真っ最中。
お相手の幽々子は仮にも、4年前の春強奪事件の主犯格だ。
その弾幕はなかなかに苛烈、かわすにはキビキビと小気味の良い反応と身ごなしが必要だ。
僅かでも体の動きが遅れればそれで最後、たちまち無数の蝶弾に囲まれてしまう。

 なのに、どういう訳か私の身体が…あっっ!!



 ピチュ〜ン。。。



  「あなたの7連敗ね、咲夜」


 動きを止める私、その思いを代弁するかのように、朗らかに幽々子が声を張り上げる。


  「あ〜疲れたわぁーっと。
   さて、というわけで、今日もお願いね、さ・く・や・ちゃん!」
  「はあい…」

 咲夜は観念して、幽々子が投げ寄越したエプロンをその身に纏った。







-----

  「ウチの庭師が大変なの!」


 幽々子が紅魔館を尋ねてきたのは、先週の今ごろだった。

  「熱が36.5度もあるのよ!」

 そりゃどう考えても平熱だと入り口での美鈴の一言も聞かず、あっさり無能な門番を弾き飛ばして
たちまち屋敷に踏み込んできた亡霊の姫。

  「大変よ咲夜!妖夢が、妖夢が…」
  「そうですか、ご愁傷様です」
  「まだ死んでないわよ。そうじゃなくて、高熱が出て寝込んでしまったの」
  「『まだ』って言い方はないでしょう。で、どれくらい高熱ですか」
  「36.5度くらい」
  「それは平熱ですわ」
  「人間ではそうだったかしら?」
  「ええ。36.5度の体で、乗り越えなければいけないんです」
  「ウチの妖夢はサンプラザじゃないわ、半幽霊なの。
   幽霊は冷たいでしょ?だから妖夢は、いつもは中途半端に体温が低いのよ。
   人間にとっての平熱は、あの子にとってはそれはもう…」
  「高熱なのですね」
  「レッドゾーン。免疫活動のK点越え。
   …だから何とかしてぇ!!」

 急に取り乱した幽々子を、ひとまず手元にあったお饅頭で落ち着かせる。
あっさりゲンキンに機嫌を直して饅頭を頬張る幽々子。しかしそこで、ふと当然の疑問が浮かぶ。



  「で、なんでウチにご来訪で?」


 幽々子は饅頭を飲み込んでから、待ってましたとばかりに頷く。

  「そこで相談なのよ。
   妖夢の風邪が治るまで、私のご飯を作って頂けないかと思って」
  「お断りします」

 馬鹿馬鹿しい。私はコンマ何秒のカウンターで突っぱねた。
しかしなおも幽々子は食い下がる。

  「え〜、妖夢の風邪が治るまで私に飲まず食わずでいろというのかしら貴方は?」
  「そうは言ってませんが」
  「いいえ言ってるわ!穀断ちして入滅、生き仏の木乃伊となってこの幻想郷を見守りなさいと…
   生きながらに土に還って仏となりその徳で幻想郷に貢献し、そして果ては謎の茶褐色の干物となって
   吉村先生に発掘されろと、貴方はそう言いたいのね!?」
  「御心配なく、あの先生は日本の土は掘りませんわ」

 被害妄想もここまで来ると立派だなあと感心してしまう。
まあ生き仏ってのは徳の高い僧侶がやった儀式だ。顕界と冥界を好き勝手行き来して
食事をねだりに来るような天然ぽややんさんには、末法の世で逆立ちしたって出来ることではない。

 無論彼女から食の楽しみを奪い去ることがいかにどえらいことか、咲夜にも想像に難くない。
死者となって、生者の三大物欲・性欲食欲睡眠欲のバランスが崩れているのだろう。
 とはいえ、それとこれとは話が別だ。
なにゆえ好き好んで、縁もゆかりも義理も必要性も無い他人の夕食まで拵えねばならないのか。
まして大食いにかけては右に出る者無しと折り紙付きの方の御食事となれば、
ちょっとした炊き出しくらいの覚悟が必要になるではないか。

  「私は私の主人の炊事に忙しいので…」
  「つれないこと言わないで」
  「いいえ、お断りします」

 しょぼん、と俯く幽々子。
ようやく諦めてくれたか、と安心しかけたその時。



  「…良いわ。貴方がその気なら…」

 さっきまで右も左も見失っていた幽々子に、不意に殺気がみなぎり始める。

  「手段は一つ…」

 不意に紅魔館ロビーに厳そかに広がる、菖蒲色の大扇子。



  「実力で従わせるまでよ!!」




 乱暴なまでに唐突に殺る気満々に変貌する幽々子。
殺気がヒシヒシと身に痛い。

 取り乱したり冷静になったり怒り狂ったりと、忙しい気分屋である。
しかもその全てが食べ物をきっかけとしているから始末が悪い。
大体なんで亡霊のくせにこんなに食い意地張ってるんだろうと不思議になる。  


 にしても、さっきまでの呆けた姿はどこへやら、一転凄まじいオーラを纏う幽々子。
普段からはおよびもつかぬ後光の刺しっぷりだ。
 やはり幽々子のカリスマの半分は扇子で出来ている。
ついでにあとの半分は、BGMで出来ている。

 
  「見損なったわ咲夜…貴方はメイドなのよ。
   メイドとはねえ…命令され、それに従う者なの。
   主人の安寧をその第一義に据え、その思し召しに服す健気な召使い…
   そう、言うなれば…貴方は生来の下僕気質…!!

   …そんな貴方が、命令に逆らうなんて…ほんとうに見損なったわ咲夜ァァァ!」


 勝手に下僕気質認定されて勝手に主人を気取られて、挙げ句勝手に見損なわれてはどうにもたまらない。
憎悪の炎をその表情にメラメラと漲らせる幽々子、これは放っておいたら真剣に命が危ない。
不快で不本意で不条理だが、これはもう相手をせねばならないではないか。

 まあ、相手をして、こっちが勝てば良いだけのことだ。
そうすれば、この大食らい幽霊の炊事係などに心身を焦がさなくても済むというものだ。

 万が一に負けたとしても、実力で闘い、実力でこの嬢に屈すのならそれもまた運命。
むしろ後腐れ無くこの降って沸いた災難を片付ける、一番手っ取り早い方法ではないか。
なあに、たとえ春強奪事件の主犯格だと言っても、私の実力を持ってすればあの程度の弾幕など…

 手の平で、かちゃりとナイフが鳴る。



  「行くわよ!!」
  「のぞむところよ!!」



 いつの間にか呆れ顔で事態を見守っていたレミリアら野次馬共の目の前で、
二人の咆吼は雄々しく交錯した。






 …






-----


  「なんでこんなことに…。」





 一日目、あっさり被弾。

 なあに、今日一日は悔しいが、平和な日々を送っていて弾幕ごっこをしばらくやらなかったせいだ。
勘が鈍っていただけのことさ。
 そう自分に言い聞かせながら、咲夜は渋々西行寺家へと出向いた。
まあ一日くらい、違う人間にメシを誂えるのもまた平凡な日々には刺激になって良いだろう。




 ところがそれで終わらない。災厄の主は、翌日も小憎らしい笑顔を満面に湛えてやって来た。

  「咲夜〜、ぜひ今日もおねがいっ!」

 昨日の夕食は絶品だったわぁ〜、と満足げに語る幽々子。まあ誉められるのは嬉しいことだ。
だが、その美味しく出来てしまった料理は、今回に限って言えば失敗だった。
まさに文字通り、味を占められてしまったらしい。 

 だがこちらも、黙って従う気は無い。
再び力勝負と行こうではないか。



 二日目。あっさりと被弾。

 なあに、「亡我郷」のクセ弾は、久しぶりに相手すると避けられないもんだ。
ひとたび覚えてしまえば楽勝だけど、ブランクのせいでその感覚が薄れてしまっていただけさ。
そう自分に言い聞かせながら、咲夜はまたも渋々西行寺家に出向いた。

 

 三日目、少し粘ったがあっさり被弾。

 微妙な違和感を感じ始めたのはこのころだった。
弾は見えているのに、どうも体が付いていかない。一体どうしてしまったというのだろう。
 歳をとったのかしら?などと独り言も虚しい。何しろ避けられない限り
あの大食らいの炊事係を押しつけられるのだから、そう暢気に構えている場合ではない。

 私は腹を決めた。シャクではあるが、この際アレだ、チキンボムだ。
幽々子程度の弾幕を避けられないとは甚だに己が情けないが、あの亡霊の胃中の大銀河を
相手にするか否かが後々かかっていることを考えれば、自分の些末なプライドなど塵ほどの価値もない。
被弾するくらいなら、ボムを打ちまくって逃げる方がまだマシだ。
そしてそれで勝ったなら、大手を振って炊事から逃れられるというものだ。



 四日目、被弾。

 おかしい。ボムさえ満足に打てなかった。ボムを打ったと思ったのに、打てていなかった。
まずい!と思った瞬間、被弾した。
 やはり歳をとったのか?反射神経まで鈍ってしまったというのか。
世間ではまだピチピチギャルと言っても過言ではない年頃なのに、この運動能力の低下は何だ。
パチュリー様の喘息じゃあるまいし、スペルを唱え切れないなんて。

 なあに、しばらく弾幕ごっこから離れていたから、ボムのタイミングを見失っているだけだ。
そうに違いない。というかそう思いたい。



 五日目、被弾。

 もう勘弁してくれ。これで5日連続でレストラン並みの大炊事大会だ。もはや言葉も出ないほど疲れ切った。
これでは避けられる弾幕さえ避けられなくなる。
今日に至っては、行こうとした方向と違う向きに動いてしまう始末だ。かつてでは考えられないバカミスだ。
これはもう、脳の神経の接続でもオカシイんじゃないかとしか思えない。

 つーか妖夢はまだ寝込んでいるのか。早く快復してくれ。
…いや、毎日こんな大規模な炊事に奔走していれば、たまには体調を崩すことくらい当然の摂理だろう。
むしろ今まで幼い身でよくこんな奴隷のような激務に耐えてきていたと頭の一つも撫でてやりたいくらいだ。



 もうなりふり構っていられない。文字通り右も左も分からなくなるほど疲労困憊のこの身だが、
だからこそ尚更明日こそは負ける訳には行かぬ。
よく考えれば、チキンボムを放つと決めた時、プライドは捨てると決めたではないか。

 この際プライドに大も小もない。弾幕ごっこに不要な要素は全て捨ててやる。
メイドの誇り・フリルカチューシャ、フリルエプロン…こんなもの、当たり判定を大きくしているだけじゃないか。
そして私の胸に詰まっている左右二枚ずつの物体。こんなプライドの塊など、今は必要ない。
これで当たり判定が小さくなるのなら、こんなもの邪魔なだけだ。
 
 カチューシャとエプロンに続いて、左右合わせて4枚のプライドを、自室のベッドに軽やかに放り投げた。
次々に装飾を取っ払い身軽になって行く我が身を、無意味に爽快な開放感が満たす。



  「あら?咲夜、なんか…いつもと感じが違う気がするわね」

 廊下へ出るとすれ違いざま、お嬢様に声をかけられる。
さすがは鋭いお嬢様、従者が毎日着用しているものを外すと、違和感があるのか。


  「そうですか。今日はメイド着ではないので、そのせいかと」
  「う〜ん、それだけじゃない気がするの…なんか、カラダ全体的なボリュームバランスがなんとなく…。
   幽々子の食事を作らされて、やつれちゃったのかしら?」
  「ええ、そうかもしれません、この胸を襲う一抹の寂寥感」
  「!!…そ、そう。それは応援するわ、頑張って」


 嗚呼心配して下さるなんて、なんて優しいお嬢様。
そんなアナタに、「胸を襲う一抹の寂寥感」というのがまさか物理的な感覚だとは口が裂けても言えません。
ちょっと気になるのは、貴方が一瞬見せた驚きの表情。

 …いや、今はお嬢様といえども他人のことはどうでも良い。
とにかく、これで戦闘準備は万端。
今日という今日こそは、この紅魔館のメイド長として、あの亡霊嬢に一泡も二泡も吹かせてやるんだから。

  「行って参ります!今日こそはすぐに帰ってきますので!」

 意気揚々と戦意満タンで私は出かけた。





 そして六日目、今日の七日目と被弾。今ココ。

 ダメだ。この一週間の疲労も相まってか、ますます身体が言うことを聞いてくれなくなっている。
簡単な弾幕ごっこにピチュンパチュンとあっさり当たり、スペルさえ繰り出せない。
まさにやられ放題やられるままだ。

  「ホント美味しいわ。ありがとう咲夜ぁ〜!」

 毎日御礼を言ってくれるのは嬉しい。勝ち誇ったような嫌味な態度を見せようとしないのも嬉しい。
だが、このままでは身体が…

  「妖夢はまだ治らないのですか」
  「むぐむぐ…うん、そうなのよ、何かタチの悪い流行病だと聞いたわ」
  「流行病?」
  「ええ、確か奇妙に和洋折衷な病名…なんだっけ、『インフレ便座』?」
  「インフルエンザですか」
  「そうそうそれよ」


 ガチャガチャと無機質な音を立てて大河のように押し寄せる謎の便座の大群を思い浮かべながら、
ひょっとしたら私も風邪かも知れないな…と咲夜は思った。
うん、そうかもしれない。風邪を引くと、妙に身体がだるくなるときがある。
この冬は悪い風邪が流行っていると言うし…。


  「咲夜ぁ、ぜひ明日からも…」
  

 かけられる声に聞こえぬふりをして、私は足早に白玉楼を後にした。
このまま手を拱いて、幽々子の言いなりになっている訳にはいかない。
ひとまずは何はさておき、この体調を元に戻さねば。





-----


  「それで、私に聞きに来たという訳?」

 パチュリーは面倒くさそうに、読んでいた本から僅かに視線を上げて言った。

  「これ以上あの炊き出しにうつつを抜かしていては、紅魔館のメイド長としての役目を全う出来ません。
   いち早く本来の職務と胸に戻る為にも、この体調をなんとか戻す方法がないかと」
  「胸?」
  「何でもありません。とにかく、もうこれ以上他人の家の世話まで焼くのは御免ですからね。
   いつの間にか庭掃除や剪定まで押しつけられてるし。
   何とか体調を戻す方法はないでしょうか?」

 自分一人で悶々としていても事態は一歩も進まない。
初めは勘が鈍っただけとタカを括っていたら、いよいよもって調子がおかしいとなれば安穏とはしていられない。
膏肓に入る前に手を打たなければ、成り行きのまま西行寺専属メイドとしてヒキヌキにでも逢いそうな雲行きなのだ。

 原因の見当も付かぬ未知のこんな症状となれば、我が家自慢の知識人にその叡智を借るのが近道というもんである。
いつも図書館に篭りっぱなしで表には滅多に出てこず、ともすればメシ食うだけの厄介者一歩手前なのだ。
こういう時くらいその有り余るノーレッジを運用させて頂かないと、毎日拵える食事の手間の割にも合わない。


  「と言われてもねえ。具体的にどこがどう悪いのか教えて」
  「身体の動きが悪いのです。思ったように動いてくれないというか」
  「年取ったんじゃないの?いっつも時なんか止めてるから、周りより速く自分だけ年取っていくのよ」
  「そんなに好き放題止めまくった覚えはありませんわ。
   それに、他はどこも、痛いとか痒いとか無いのです。それに日常生活では、前と変わったような印象は…」

 ふ〜ん、と小さく一つ唸り、テーブルの紅茶にゆっくりと口を付けながらパチュリーは首を傾げる。

  「ただの風邪じゃあないかもねえ」
  「やはりパチュリー様もそう思われますか」
  「風邪薬でも買いに行ったら?」
  「どっちですか」


 苛立つ私を見て一つため息をつき、


  「だから、薬を買いに行けって言ってるのよ。
   居るでしょう、この間貴方とレミィが相手した、適任中の適任者が」


 そう言ってパチュリーは、自らの帽子にくっついている三日月のバッジを人差し指で指したのだった。






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  「次の方、どうぞ〜」

 底抜けに明るい看護師、ならぬ看護兎の声に促されて、私は診察室に入った。

  「あらいらっしゃい。珍しい患者さんね」

 誰がどう見てもナース服には見えない赤青の奇抜な服を纏い、
誰がどう見てもトレンドとはかけ離れたヘアースタイルでたわわな銀髪を結った完全無欠の宇宙人スタイルで、
永夜の異変以来の再会となる永琳はまるで稀少な秘薬でも見るように、イヤな光を帯びた目で私を迎えた。

  「さて、本日はどのようなお薬をご所望で?」

 どこが悪いのかではなく、どんな薬が欲しいのかと訊く辺り、流石は八意医院である。
まあ何にせよ、目の前におわす方をどなたかと心得れば、恐れ多くも月の世界では才色兼備の体現者、
その聡明たるや十指に入るとその名を轟かせたという薬学者様だ。
知識はあれど地下の大図書館で日光浴ひとつしないままに長年を過ごす紫モヤシのゾンビーナに比べ、
考えてみれば病の治し方を聞くには遙かに適任だと言えるだろう。

 四百四病に精通するであろうこの天才宇宙人なら、私の異状など些末な風邪のようなもの。
たちどころに治癒する薬剤などお茶の子さいさい屁の河童ってモンだろうと期待に胸が高まる。

  「先日から訳あって弾幕ごっこに付き合わされているのですが」
  「ふむ」
  「どうも身体の動きが悪いのです」
  「なるほど」

 頷きながらカルテに書き込む永琳。

  「まず身体が思うように動きません」
  「ふむ」
  「投げるナイフが巧く当たりません」
  「ふむ」
  「気持ちと違う方に動いてしまったり」
  「ふむ」
  「時には金縛りにあったかのように身体が」
  「ふむ」
  「スペルを唱えようとして唱えられないこともあります」
  「ふむ」
  「かと思ったら、なんでもない瞬間にスペルを打ってしまったり」
  「ふむ」
  「…真面目に聞いてないでしょう?」
  「ふむ」

 あっさり肯定してくれるなコラ。

  「…ああ、ごめんなさい、私事で悪いんだけど、ちょっと優曇華のコトが気になっちゃって」
  「そちらも風邪でも貰いましたか」
  「いいえ、そんな大層なことじゃないわ。些細なことよ。
   ただ誤って私が置いていた試験薬を、ジュースと間違って飲んでしまっただけ」

 薬剤師の調合する新薬とは、その人体実験が高額バイトとして都市伝説になるほどヤバイ物品である。
それをイタイケな兎がジュースと間違えるような場所に保管してたとは、この女本当に薬剤師免許持ってるのか。

  「…身体は大丈夫なんですか」
  「大丈夫だと思うわよ。ただの精力増強剤の試験薬だから。
   ユンケルとオロナミンCと蓬莱の薬を8:1:1で混ぜたもの。
   だから基本的には健康な人でも無害な成分ばかり。ただ興奮状態になっちゃって、
   今はひとまず地下牢に幽閉してるの」
  「酷いことを。でもまあ、しかしそれなら確かに暴れるくらい精力が付きそうですわね、
   黄帝液に元気ハツラツに蓬莱…
   …え?蓬莱?」


 アンタペットの手が届いてしまう所に何てモノを置いてやがりますか。


  「大丈夫よ、微量だから」
  「はあ、そうですか、微量なら蓬莱の薬もその影響は無いのですか」
  「ええ。まあ小300年ほど寿命が延びたでしょうけど」


 300年か。気だるい昼下がりの何気ない好奇心と喉の渇きが、どう足掻いても今世紀中には
尽きるであろうはずだった命を、あろうことか24世紀まで引き延ばしたという。
ドラえもんに逢えるじゃないか、旅立つ鉄郎とメーテルまで見送れるではないか。
銀河連邦とシリウス同盟の戦争さえその目で見られるじゃないか。
ペットも飼われる主人を間違えるとこの始末だ。つくづく天才の住む場所は恐ろしい。
  
 兎一匹の寿命をぶっちぎりのギネスブック級に引き延ばしておいてウフフと屈託無く笑うこの女、
そうやはり彼女は天才だ。
天才というのは凡人と一味違う。天才と変人は紙一重どころではなく、表裏一体なのだ。
 いつもなら近寄りたくもないところだが、奇病を治す薬を調合してもらおうとする身としては、
多少変人でも天才属性が高い方が期待出来る。今は存分に天才っぷりを発揮してもらいたい。
用が済んだら明日には近づかないからせめて今だけでも。

  「それで、本題ですが…」
  「ああ、薬だったわね。もう一度症状を教えて頂戴」

 はあとため息をついて、仕方なく咲夜はもう一度症状を説明しなおす。

  「まず体が思うように動きません」
  「お疲れ気味のようね、ニンニク」
  「ナイフが巧く当たりません」
  「集中力の欠如ね。DHA入りヨーグルト」
  「気持ちと違う方向に動いてしまったり」
  「精神的にも疲れが出てるのね。緑茶の茶葉」
  「急に身体が動かなくなったり」
  「貧血気味かしら、法蓮草」
  「スペルを唱えようとして唱え切れなかったり」
  「便秘ね、コーラック」
  「かと思ったら何でもないときにスペルをうっかり唱えてしまったり」
  「尿漏れね。ハルンケア」

 ためらい無く人界の市販薬を手に取る永琳。
 月世界屈指の薬剤師というプライドもへったくれも無いらしい。

  「材料はこんなところでいいかしらね」
  「で、なんでそれを全部ミキサーに入れてるんですか」

 最高にイヤな予感がする。
 というか入れた容器がミキサーって時点でもうそれしか可能性が無い。

  「ちょ、ストップ!!スト…」
  「スイッチ・オォン!」

 軽快に弾む声と共にその人差し指が禁断のボタンに突き刺さる。
同時に小さな振動と無機質な機械音を立ててミキサーが猛り狂う。
 各々の使命を背負いし全ての精鋭エレメンツが今、月の天才の手掛けし秘薬として新たな命の息吹を与えられ、
押し混ぜられ掻き混ぜられてたちどころに緑黒色の前衛的物質へと姿を変えて行く。

  「混符、ミキサー中の大銀河〜」

 中身がどんどん、甚だ馬鹿げた色合いの液体に変化している。緑でもない、黒でも白でもない、新種の色だ。
こんなの絶対銀河じゃない。こんなのが銀河なら宇宙に夢は抱けない。第二のアームストロングは一生要らない。

 ヴィ〜〜〜ンというミキサーの重低な機械音が、心なしか悲鳴のように聞こえる。
美味しいミックスジュースや野菜の微塵切りを作って家庭に笑顔と団欒をもたらすべく夢と希望を抱いて
生まれてきたであろうこのミキサーにとっても、その人生の修羅場を迎えているのは間違いない。
がんばれミキサー、あと少しの辛抱だ。 



  「はい、出来上がり」

 一分弱ほど回した後、永琳はそう言ってぱちんとスイッチを切る。ヴィ〜ンンン、と安心したかのように、
ミキサーは即その動きを止めた。

 機械から容器をはずし、蓋に手を掛ける。

  「月の頭脳こと私の知恵の結集で作り上げた、迷える貴方を救う究極の秘薬…」

 グロテスクな色彩の液体を満々と湛えた容器を、得意気に高々と掲げてみせてから。

  「いざお披露目の瞬間、お立会い…よいしょっ」

 無造作にパカッと蓋を開ける永琳。





  「…ぅぐっ」





 言った。今絶対この女「うぐっ」って言った。
お前ふざけんな、自分がえずくようなモノを他人に飲ませる気か。


  「御覧なさい、効きそうなお薬ですよ」

 嘘吐けと思いつつも、好奇心の悪戯、怖いもの見たさに任せてミキサーの中を覗き込む。
 だが、それがまずかった。

 法蓮草の緑色がまず視覚にジャブを打つ。
水面に浮かぶヨーグルトと緑茶葉の破片が、素材の決定的な不調和を体現しボディーブローでジワジワ攻める。
そしてその視覚効果に気を奪われた瞬間、法蓮草の青臭さとヨーグルトの乳臭さを波動のように纏い、
溢れんばかりのニンニクの臭気が渾身の右ストレート!

 私は受身をとることも出来ず、一瞬にして永琳医院の冷たいフローリングに曙スタイルで沈んだ。


  「あらあら、やっぱり本調子じゃないのね。今薬瓶に詰めてあげるから、それ持って早くョ敷に帰りなさい」
  「…貴方のせいよ紛れも無く」
  「毎食後三回服用して下さいね」

 ドポドポと緑色の矢吹ジョーを薬瓶に流し込む永琳の鼻と口には、いつの間にか傍のベッドから酸素マスクが引かれている。

  「ハイ、どうぞ。フタは堅く閉めておいたから安心しなさい。
   …さあ、帰った帰った。三日分出しておいたから、それでもダメならまた来なさい。
   私は、あの子を見に地下牢に行ってくるわ」
  「ま、待って。本当にこれを飲めとおっしゃるのですか」
  「良薬口に苦しですよ。医者のやることを信じなさ〜い」

 そう言ってハイヒールを高らかに鳴らして診察室を出て行く、月世界きってのエリートマッドサイエンティスト。
私の頭には頭痛が、診察室にはおそらく三日は消えないであろうジョーの右ストレートの残り香が、
それぞれしつこく漂っていた。









-----

  「覚悟を決めなさい、咲夜」

 パチュリーが苛立たしげにせかす。

  「分かっていますわ、パチュリー様」

 私も苛立たしげな口調で返事を返す。



 時間は早いもので、あっという間に食事も終わった。
いつもどおり丁寧に調理した筈の今日の夕食の味を、しかし私は覚えていない。


  「薬はね、テーブルに置いておくと飲み忘れないんだよ!」


 無邪気で可愛らしい妹様が発した、悪夢の一言。まさか逆らう訳にもいかず、
結局仄かなキャンドルに彩られた華麗なディナーの間中、まるで何年も掃除していない水槽から汲んできたような
緑色の高粘性褐色液体がずっと私の目の前に鎮座していた。
 眈々と睨みを利かす、リングサイドの緑ジョー。この口にそれを食後流し込む儀式が待っているなどと想像すれば、
その一時に食している肉料理の味など覚えていられるわけが無い。

 食後に服用せよといわれたこの飲み薬、私は25分にわたってその薬と睨み合いの格闘を演じていた。
食後に服用、という医薬品の場合、基本的に食後30分以内を目安としているという。
もちろんそれはあくまで「目安」だが、この私が薬の恐怖に負けて食後30分を超過するなど、あってはならない。
メイド長はいつでも、瀟洒で完璧でなくてはならない。

 次第に私の心に勇気が宿ってくる。
そうだ。私はいったい、何に怯えているというのだ。





 手元の懐中時計を見やる。
 あと5分。 

 この妙な病を治したいのは当然だ。そして、そのために誂えた秘薬が目の前にある。
素人目には異常だが、あの女は月の世界で天才といわれた女傑である。
燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや。天才には天才にしか分からない次元があるのだ。
 実際彼女は奇行に見えて、一つ一つ私の症状にあわせて材料を選んでくれていたではないか。
私が西行寺の亡霊にいつまでも傅く必要が無いよう、知恵と思いやりを持ってして親身に調合してくれた、
世界にひとつだけの薬だ。

 マッドサイエンティストなんかじゃない、彼女は知識と慈愛に溢れた、最高の薬剤師ではないか。



 あと3分。


 今私がこの怯懦の心に屈すれば、目の前のパチュリー様に大失態を見せつけることになる。
「ねえねえ聞いて咲夜ったら、怖くて薬も満足に飲めないのよう」なんて陰口が千里を走り、
三日もすれば幻想郷中に広まるだろう。

 そんな噂が耳に入れば、お嬢様の私への信頼はきっと砂のお城のごとく崩れ去る。
「完璧なメイドだと思ってたのに、案外子供なのね。失望したわ、咲夜!」なんて言われちゃうかもしれない。
そんなことになったら、私は生き甲斐を失ったようなものだ。もう屋敷にいられなくなる。
辞職だ。依願退職だ。

 

 あと1分。


 つまり今までの話を総合するとだ。
この薬を飲むか否かには、私のクビがかかっているのだ。
飲めなければ路頭に迷い、飲めば私は瀟洒なメイドとしてあの可愛らしいお嬢様から永遠の信頼を手に入れる。

 そうだ、その地位と比べればこの程度の苦薬は屁でもなんでもないではないか。
なあに、喉元を過ぎるまでの辛抱だ。完璧な存在であるこの私が、口腔に留まるほんの数秒を
耐えられぬはずが無いではないか。
 いや、紅魔館メイド長の地位と誇りにかけて、意地とプライドで必ずやこの難攻不落の小瓶の中身を
飲み干して見せようぞ!

 そして、お嬢様は永遠に私のもの!!



  「咲夜、行きます!」



 迷っている暇は無い。もう30秒を切っている。
私は薬瓶の蓋を勢いよく開けた。あの「右ストレート」が辺りに広がっていく。

 目の端で、パチュリーが倒れるのが見える。休憩中の門番が口を押さえてトイレにすっ飛んで行った。
飛んでいた小悪魔が真横の床に墜落する。
 さすがだぜジョー、無敵の香り。こんなパワーを実際体内に取り込めば、どんな力が漲るだろう。
最早亡霊も悪魔も敵じゃなくなるだろう。なんと楽しみではないか、神の領域の秘薬!! 
さあ来い、緑の秘薬!!我が身体に、力を与えよ!!


 一回分の分量をコップに移すと、私は一気にそれを口の中にぶちまけた。






 ああ、トんでいく。

 トんでいくよ。世界が真っ白になっていくよ。

 薄れいく意識の中おぼろげに覚えていたのは、口に広がる亜空間ファンタズマゴリア。
嚥下してゆく喉の、痛みにも似た痺れ。

 そして、ひとときでも永琳を薬剤師として感謝してしまったことに対する、猛烈な後悔だった。







-----


  「おはようございます、咲夜様。突然訪問する無礼をお許しください」


 翌朝、自室で寝ていた私の元を予期せぬ客が訪れた。

  「ここ一週間、私の体調管理の至らぬせいで幽々子様の炊事役、あまつさえ庭掃除までやって頂いたそうで。
   本当に申し訳ありませんでした」

 やってきた少女はその銀髪の御河童頭を、慇懃に深々と下げて私に詫びた。
服に焚き染められた香の馨しい香りが、ふわりと私の顔を薙ぐ。


  「え、ええ、まあ良いってことよ。それより、もう体調は良いのかしら?」
  「はい、沢山お休みを頂いたお陰ですっかり快復致しました」
  「それは良かったわね。私はこのとおり、今日は暇を取らせていただいているの」


 あの薬、私の意識を一瞬でトばすだけトばしておいて、その癖しっかりコーラックだけは効きやがった。
おかげで今日は一日中、腹の中で大腸菌が壮絶なプロジェクトXを全菌総動員で展開中だ。
トイレとベッドを往復するのに私は体力の全てを捧げ、とてもじゃないが家事などに従事できない。

 薬人を殺さず薬師人を殺すなどという格言を直喩的に噛み締めながら、大腸のオーケストラに悲しく耳を傾ける。
私が快復の暁には容赦はしない、幻想郷のドクターマシリトたるあの女には、それ相応の贖いをしていただこう。


 あれ?あっちがマシリトってことは、私はスッパマンってか。
いやいや冗談じゃない、幻想郷のスッパマンなら八雲亭に…





  「咲夜様〜?大丈夫ですか〜?」

 ふと気づけば、妖夢がその小さな掌を私の顔の前にひらひらと揺らしていた。

  「え?ああごめんなさい、ちょっと精神的にスランプに陥ってて。
   で、ご用件がまだおありで?」
  「はい。実は幽々子様が咲夜様の手料理が大層お気に召したようで、今度の土曜日のランチを
   また是非ご馳走していただけないかと所望しておりまして」
  「…」

 ああ、一難去ってまた一難。というか去ってもないのにまた一難。
すっかり味を覚えられてしまったらしい。
 それにしても、「食事を作ってくれ」というお願いを事もあろうにいつも炊事役をさせている妖夢に伝えさせるとは。
幽々子も随分と思い遣りが無いものである。主の命令に忠を尽くし健気に頑張る妖夢が不憫でならない。


  「お手数をおかけしますが、どうか幽々子様の頼みをお聞き入れして頂けないかとお願いに…」
  「ねえ妖夢…」
  「はい?」
  「一つ質問があるんだけど」

 もうなりふり構っていられない。可哀想な妖夢と、可哀想な私。
この苦境を救うには、8回目の弾幕ごっこには必ずや私が勝利を収めなければ。

  「実は…」



 私は私を悩ませる奇病のことを、妖夢に訥々と語って聞かせた。
妖夢は合間ごとにはあ、はあと相づちを挟みながら、真剣に聞き入っていた。
人の長話に真剣な態度でしっかり向き合うというのは、簡単に見えて意外と難しい。
長い話の間中しっかりと聞く態勢を崩さないのは、幼い日々から厳しい生活に身を置いてきた証であろう。

  「…というわけなんだけど、貴方何か良い方法は知らないかしら」
  「永琳…とかいいましたっけ、月の知者と名高いあの方に尋ねてみては」
  「アレはダメ。おのれの兎をサンジェルマンにしておいて、安物ミキサーの容器に銀河のカオスを召還し、
   出来上がった毒物を月の秘薬呼ばわりして、挙げ句の果てにそのアオコ水のせいで私はマンモス下痢ピーよ」
  「全く意味が分かりませんが、取りあえずお気の毒様です」
  「どうもありがとう。それで、貴方も何か智慧をくれないかしら?」
  「…はあ、役に立てるかどうかは分かりませんが…」

 妖夢は一際難しい顔を作ってから、ゆっくりと口を開いた。


  「陰陽道の一つなのですが、人間の肉体は魂と魄、二つのエネルギー要素から成るという考え方があります。
   魂は一般的に言われるタマシイ、つまり精神です。
   かつては心の臓と言われましたが、実際には脳にあるものですね。
   頭に宿る、肉体を動かす指令の力がタマシイなのです」
  「なるほど。それで?」
  「そして魄の方。ハクというのは、タマシイと対を成すモノ、つまり肉体に宿るエネルギーです。
   タマシイとハク、二つがセットになって、人間は物を考え、その肉体を動かして行動している」
  「人間の思慮がタマシイで、行動がハクと名付けられていることかしら?」
  「微妙に違います。
   タマシイによって操られた精神がハクに命令を与え、ハクはその力を以て肉体を操る。
   思慮そのもの、行動そのものではなく、それを行わせるエネルギー主体が人間の中にもう一つずつある…
   そういう考え方の元に出来たのが、この魂魄思想なのです。」 

 能面のように表情一つ崩さぬまま、妖夢は懇々と語った。

  「それで、その上で私に何を言いたいの?」

 悪いとは思いながらも、私は妖夢に結論を急がせる。
相変わらず表情が硬いまま、妖夢はまた口を開く。

  「咲夜様の症状は、この魂魄の要素で言えば、魄の方に問題がある症状です。
   魂、すなわち精神的なモノに乱れはない。
   あの弾を避けよう、スペルを唱えよう、右に動こう左に動こう…そう思っていても身体が動かないのは、
   魂の命令を魄が正しく受け取れていない、もしくは正しく受け取っていても肉体に正確に転送出来ていない、
   ということなのではないでしょうか」

 う〜む、霊魂関係を語らせるとさすが半分幽霊なだけに説得力抜群だ。
ついでに自分の苗字にその二字を冠している奴に語られては、その信頼性にも箔が付くというものだ。

  「…と、そうは言ってもねえ。私の中で魂と魄を考え分けたところで…」

 どうしろ、と言うのか。ひとまず精神薬を飲む必要がないということが判っただけだ。
 先ほどの理論に乗っかるなら、私が今こうして巡らせている思案は、魂の力によるモノである。
確かに私は例の秘薬で意識をトばされたことはあったにせよ、この異状の中で精神的不安定を催したことは一度もない。
魂の方は、何ともないらしい。
 それでは肉体の方はどうか。肉体はどこも痛い痒いということは無いし、別に麻痺が来ている場所がある訳でも無い。
やはり、その動きを命令する魄の方に問題があるようだ。
健康な精神と、健康な肉体。その中でのこの奇病は、妖夢の話を聞けば聞くほどにその二つを繋ぐ連絡橋…
つまりハクに災いが降りかかっていることを予見させる。

 だが、魄ということは霊体関係である。そんなもの、どうやって治せと言うのか。
どこぞの霊媒師にでも治してもらえということかもしれないが、私は神様同様、そういう胡散臭い輩を
ハナっから信じていない。
そんなモノに縋ってこの奇病が雲散霧消するというのなら、エンガチョでも何でもとっくにやってもらっている。

 ならば何故この魂魄思想を信じてしまうのか、ということになるのだが、どうも心に引っかかるのだ。
精神と肉体の間にもう一段階の道を経ている、その考え方自体奇妙と言えば奇妙なのだが、
なにか引っかかる。私は、何か重大なモノを見落としてはいないか。



 そこまで考えて、私はふと気付いた。
精神と肉体の連絡橋。思慮と行動の間に挟まる、二つを繋ぐワンステップ。

 思慮は健康でも、肉体が行動を伴ってこない。
つまり、思っていてもそれが肉体に伝わらない。


 ツタワラナイ。そう、ツタワラナイんだ。
動けと思っているのに、ボムと思っているのに、それに反応しない咲夜という身体。




 命令を伝える媒介。
動けという命令を咲夜に下す為に、使われているモノ…




 動きがぎこちない。
 ボムを打てといっても打てない。
 ショットが途切れ途切れになる。






 ……!!






 わかった!! アレだ!!!








   「USBパッドだ!!!」








 


 茫然と見送る妖夢を尻目に、私は脱兎の如く香霖堂へと駆け出した。 






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  「それで、具合はどうなの咲夜」

 相変わらず気怠そうに口を開くパチュリー。

  「はい、お陰様で絶好調です。
   まさかUSBパッドがヘタっていて、十字キーが反応悪かったり、遅延したり、ショットボタンや
   ボムボタンの入力が途切れたり、十字キーがイカれて入力が変に入っちゃってたなんて、
   妖夢のアドバイスを聞くまで思いつきませんでした」

 私は得意になって告げる。

  「そう、それは良かったわね。あの馬鹿げた秘薬も無駄じゃなかったということかしらね?」
  「いいえ、あっちは120%無駄でした」
  「あっそう。きっぱりね。 それで、幽々子の件は?」
  「はい、先ほど行ってきて、勿論連敗は7でストップさせました。
   でも、お願いされていたのは妖夢の快気祝い。そして妖夢は、私を救ってくれた恩人です。
   ですから、今度の休日にはもう一度白玉楼に出向いて、腕を振るってこ謔、と思っています」
  「それが良いわね。恩は返さなくちゃ。
   それにしても、自分の従者の快気祝いの料理を他人に作らせるなんて、あの亡霊嬢も随分と甲斐性無しね」
  「ええ、本当に」

 私達は顔を見合わせ、どちらからともなくクスクスと笑った。 


  「さて咲夜、レミィにもちゃんと報告してきなさい。
   あの子ああ見えて、随分貴方のこと心配してたのよ。
   事情をお話しして、早く安心させてあげなさい」
  「そうですね、ではこれからお嬢様の部屋へ行って参りますパチュリー様」
  「ええ、行ってらっしゃい」


 そう言って横を通り過ぎる図書館の特設ベッドには、毒気に当てられ未だに失神の深淵から戻ってこない
美鈴と小悪魔の姿がある。
 咲夜は心の中で、二人に小さく合掌した。


 そして足取り軽くお嬢様の部屋に向かおうとした所で、私はふと忘れ物に気付いた。
自室に回り道してからでも遅くはあるまい…私はそう思案して、ひとまず足の向きを変えて自室の方へ歩き出した。








-----


 わたしは心配だ。咲夜のことが心配だ。

 いつもなら咲夜に淹れてもらう筈の紅茶も、ここ数日は自分で淹れている。
自分で淹れてみて初めてわたしは、紅茶作りの難しさを実感した。
咲夜のような味や香りや気品が、どうやっても出せないのだ。
あの子はやっぱり、わたしにとって大切なメイドだ。


 そんなあの子が最近身体が動かないだの何だのと言って幽々子にやられ放題であることを、わたしは憂いていた。
最後は実力勝負で決しているのだから幽々子を責めるつもりはないが、日を追うごとに鬼気迫ってゆく咲夜の顔には
さすがのわたしも些か気圧された。

 そして忘れもしない、白玉楼に出向き始めて五日目の朝。咲夜はついに、その胸の詰め物さえ捨てた。
臆面もプライドもなく、凛々しく己を律して立ち向かって行く咲夜。その凛然とした勇姿に、
わたしは僅かに感動すら覚えたものだ。
たかが詰め物、されど詰め物。あの詰め物には、彼女のプライドが詰まっていたはず。

 しかし、所詮そんなモノは虚飾のプライド。自己満足、外見を繕っただけの欺瞞でしかない。
咲夜はそれを想い、きっと最大級の勇気を持ってそれを捨てたのだろう。そこまで自己統制を行ったのだ、
きっと咲夜は遠からず、この困難をその勇気と工夫で乗り越えて行くに違いない。
心配はしながらも、わたしはそう確信していた。



  コンコン…

  「失礼します、咲夜です」



 不意にドアがノックされる。


  「入りなさい」
  「はい。失礼します」


 丁寧にドアを開け、勇者のメイドが顔を覗かせる。


  「お茶をご自分で淹れられていたのですか…申しつけて下さればいくらでもお淹れしましたのに」

 困難に向き合って行こうとする咲夜に、そんな手間をかけさせられる訳が無い。
必死で頑張っている素敵な貴方の姿を見て、わたしに邪魔なんて…絶対出来ないわ、咲夜。

  「え、ええ。たまには自分で淹れた紅茶を飲みたくてね」

 顔が紅くなりそうな感覚を頬に感じて、ふん、と私は窓の方を向いた。

  「そ、それで、用件は何かしら」
  「はい、幽々子様の件ですが、弾幕ごっこに勝ちました。今度の土曜、妖夢の快気祝いを最後に
   白玉楼にはもう行きません。明日から基本的には、またお嬢様のお世話を精一杯務めさせて頂きます」

 ああ、何て嬉しい言葉。
貴方は自分のその手で、降りかかる災難を薙ぎ払い、輝きを増して戻ってきてくれた。
 メイドの装飾品のみならず、胸に詰めた偽りのプライドまでも投げ捨てて当たり判定を狭め、
以て頭上に広がるどす黒い雨雲を薙ぎ払い、ついに太陽の光をその心に迎え入れた。
よく耐えた、よく頑張ったわね、咲夜。貴方は私の誇りよ。


  「あ、ああそう。
   まったく、幽々子程度に何連敗もして。情けないわね!」
  「すみません、長い間ご心配をおかけしましてすみませんお嬢様」
  「べ、別に心配なんてしてなかったわよ、貴方のことなんて…!
   …まあ良いわ、折角だし、私が淹れた紅茶くらいは、飲んで行きなさい」


 顔を窓に向けたまま手探りでペアカップのもう一方を掴み、乱暴に差し出す。
咲夜は、いただきます、と一言言ってカップを優しく受け取り、自らそれに注いだ。

 静かな時間が、二人の間に流れる。
 
  「で、体調の方はどうなのよ」

 どうもくすぐったい雰囲気を嫌い、わたしは必死で会話を切り出す。

  「はい、お陰様で好調です」
  「そう。あの薬の所為かしら?」
  「いいえ、それとは違う方法で治ったのです」
  「あらそうなの」

 窓の方を向いたまま、ふうん、と相槌を打つ。
窓に映る顔は、まだほんのり紅い。もう少し、貴方の方に向き直るのは待って頂戴咲夜。

  「それで、どんな方法だったのかしらそれは」

 気持ちを落ち着かせる為、わたしはゆっくりと多めに紅茶を口に含んだ。

  「はい、それは…」

 咲夜がきっぱりとした口調で切り出す。




  「パッドを新調しました」

  「ブフッッッ……!!」


 口の中の紅茶が細やかな飛沫となって、勢いよく窓に飛び散る。
目の前の窓が一瞬にして、艶やかな光沢と気品を併せ持つ雅な琥珀色の水玉模様に染まった。


  「さ…咲夜…今なんと……」
  「ですから、パッドを交換、新調したのです。
   そしたらあっさりと、身体が軽くなったかのようにスイスイ動けるようになったのです」

 そう、貴方は結局、その胸の誘惑から逃げ切れなかったのね。
あの日見た貴方の生まれ変わったような晴れ姿は、単に古いモノを捨てた間の、ツナギ…。

 自慢げに語る咲夜の瞳には、一点の曇りもない。
ああ、その目、もはや悟りの境地だわ。虚飾豊胸教会の、最終解脱に至っているわその晴れやかな顔。


  「ま…また何でそんなことしようと思ったのよ」
  「妖夢のアドバイスがきっかけになりました」

 あ…あの半幽霊…ガキのくせしてとんでもないアドバイスしやがって…
しかもそれが成功してる辺り、慧眼と言うべきかマセガキと言うべきか。


  「そ、そうなの。意外なモノがカギになるのねえ。
   そ、それで、使い心地はどうかしら」

 ああ、なんだってわたしがこんな事聞かにゃならんのだ。
なのにそう思う気持ちの裏腹で、この抑えきれない好奇心。誰かどうにかしてくれ。


  「はい、良好です。手のフィット感も最高です」
  「そう、それは良かっ…て、手…?」


 思わず口が開く。今この女、なんと…


  「今あなた、ど、どこのフィット感だと…?」
  「ですから手です。手の平です」
  「手…手の平のフィット感ってのは…ど、どういう意味かしら…」
  「ですから、手で握った時に、カタチ的にしっくり来るかどうかとか、触り心地がどうかとか」


 ブラボーだ。ファンタスティックだ。
羞恥も躊躇もなく、パッドの使い心地の第一視点が手の平のフィット感であると断言するとは。
カタチが掌に合うか?触り心地がどうか?ああ、なんて破廉恥な。
ってことは、やっぱり…

  「や、やっぱり、あ、あの部分のお…お…押し心地なんかも…良いのかしら?」
  「押し心地…そうですね、ボタンの押し心地も悪くありません」
  「ボタッ……!!」

 こ、こっちが煙に巻いた言い方をしてあげたというのに、何て直截な言い方をしてくれますか貴方は。
ああなんてこと、いつも瀟洒で清廉なはずの咲夜が、あろう事かアノ部分のことを「ボタン」呼ばわりだなんて…
ああ破廉恥破廉恥破廉恥破廉恥…南無阿弥陀仏南無阿弥陀…

  「そう…パッドの上から、ナニを…こう、押し…押し込む、のね…??」
  「上から…まあ上からと言えば上からですね。上からボタンを押し込みます。
   お陰様で随分と弾幕が避けやすくなりましたよ。やっぱり手に馴染むパッドを使うのは大事ですね」


 こっ…この女、弾幕ごっこの最中に胸を触ってるっていうのか? 何なんだその変態的なクセは!?
しかもそれで避けやすくなるって正気なのかこのメイド!? 

  「そ、そうなの…パッド一つで変わっちゃうモノなの…」
  「はい、劇的に変わりますね、本当に劇的に」
  「わ、判ったから咲夜!そんなに力説しないで頂戴よ」
  「あ、すみません」

 きょとんとして謝る咲夜。ああ、なんてイノセンス。
無邪気って罪ね。無邪気な恥ほど残酷なモノはないのよ咲夜。



 だけど、そんな無邪気な子だから…意地悪したくなっちゃう。


  「で、古いモノは結局、何がいけなかったのかしらねえ?」


 …って冷静になりなさい、わたし。
 そんなこと聞いたらこっちが恥の墓穴を掘るような…


  「そうですねえ…結局押しすぎてボタンがヘタっていたというのが原因でしょうか」
  「押しすぎてってコトは貴方、む、昔からやってたの!?」
  「ええ、桜花事件以来ですから、かれこれ4年近いかと」


 4年間もやってたのかそんなコトを…ってことは、永夜事件の時もこのメイド、
胸を揉みながら私の横で弾を避けていたの…?
 気付かなかった。ちっとも気付かなかった。しかもその「ボタンがヘタった」って言い草…
貴方女性としての恥じらいとか慎みとか、そういった品位というモノは欠片もないのかしら?


  「他にも何か…?」
  「ええ、動きや反応が鈍かったので予感はしてたのですが…
   やっぱり、遅延もしてたみたいです」


 ち…橙!!? あの猫がパッドを!!?
あいつ年齢的に妖夢以下じゃん!あんな幼猫さえパッドを!?

 しかも咲夜は今「やっぱり」って言った。それって外見で判るモンなのか?
さすが同好の士、同じ匂いは嗅ぎ分けられるというのかしら。

 …待て待て、その前に「反応が鈍かったので」って、どういう意味よそれは!?
まだ将来があるあの稚いネコの御胸に何をして、どんな反応を試したってのよアンタは!?
鬼畜…鬼畜よ咲夜…!!


  「あと身体が動かなかったのは十字の所為ですね、やはり」
  「しかもまだあるの!?…って、十字?何それ?どういう意味?」
  「ですから、上下左右に押すアレのことですよ」


 なるほどそうか、ただ局部を押すだけじゃ飽きたらず、上下左右も…。
それはもう中毒ね、チュードク。なんてはしたない嗜みだこと。

  「そこも貴方が言う『ヘタっていた』ということなの?」
  「ええ。弾幕ごっこの時はあまりやりませんが、宴会騒ぎの事件の時は、
   やっぱり必殺技の為にグリグリとやりましたからね」
  「グ〜リグリィ〜〜ッッ!!!」


 グリグリ〜と来たかぁ。そうかグリグリかぁ。しかも必殺技と来たモンだ。
確かに宴会事件の時は、いつも以上に激しく身を動かしたわね。
普通程度の「ボタン押し」じゃあココロもカラダも満たされず、四方向にグリグリと激しく動かしちゃってた訳ね。

 闘いながらグリグリと局部を押し回し、そして脳内にドカンと放出されるアドレナリン!!
なんて熱いの咲夜!! 何かが間違っている気もするけど、とにかく貴方はとっても熱い!!!

  「そう…そんなカラクリが…」
  「ええ、お恥ずかしながら」

 恥ずかしがらなくっても良いわ咲夜。
つーか今更恥ずかしがっても遅いって。


  「ま…まあ治って良かったじゃない。新品に不満はないのでしょう?」
  「ええ、特には。先ほど行ったとおり手触りも良いですし、押し心地も悪くない」
  「それ以外に何か判断基準が無いの貴方って人は!?」
  「え? そりゃそうですよ、所詮パッドですよ」


 所詮。今この人、「所詮はパッド」と言った。
そう、咲夜にとってパッドは「所詮」なのだ。
あって当たり前、それが当然。肉体が、精神が、そしてパッドが合わさり三位一体渾然一体、胸に広がるザ・ワールド。
彼女にとって、エジソンは偉い人と同じくらいそんなの常識。
グローバルスタンダード。生涯の友。座右の銘!生きる証…!!


  「そう…不満がないなら何よりだわ…」
  「ええ。まあちょっと大きすぎるかなってきらいは有りますけど」
  「パッド使ってる人が『大きすぎる』なんて、そんな文句言うんじゃないわよ!」
  「そ、そうですね。贅沢な話ですね、はい」



 ほんの数分前咲夜にトキメいた私のハートを、どこに持って行けばいいのだろう。
 しがらみを脱ぎ捨てて勇気凛々愛燦々と困難に立ち向かって行った、誇り高き私の自慢のメイドとさえ思った
あの眩しい咲夜。
 その咲夜が実はパッド教教祖クラスの悟りを修め、弾幕を避けるにあたっては胸を揉みしだき、肉弾戦となれば
四方にグ〜リグリと激しさを増し、ついには無邪気な子猫に自らの性的嗜好をカラダで教え込む鬼畜っぷりを発揮、
生涯の伴侶としてそんなパッドと共に人生を歩んでいこうとする超弩級のスーパーフェチストだったとは。


  「お嬢様…?」
  「ええ…これが現実なのね…」


 運命を操る力も最早無力だ。
もはや運命の歯車は止めようもないほど、ビュオンビュオンと音を立てて回転している。
もう誰にも止められない。この女の人生は…



  「いかがですか、お嬢様もパッドを新調してみては」




 …再び現実に引き戻される。
今この女、とんでもなく失礼なコトぬかさなかったか?



  「咲夜。口が過ぎるわ」
  「はい?」
  「私にパッドを『新調』しろと。それはつまりアレ…私もパッドを使っていると、貴方はそう言いたい訳?
   そうね、そうなのね!?」

 いきり立つわたしに、咲夜は怯えた目を向ける。

  「す、すみませんお嬢様、失礼しました」
  「そうよ、大っ変失礼よ咲夜!」
  「そうですか、お嬢様はキーボードでしたか」
  「キッ…キーボード!!!
   平べったくて押し込みストロークが浅くて、凹凸がないと貴方はそう言いたいのね!!」


 ああ、もうわたしの運命の歯車も止められない。
冷静でなんて居られない。パッド使ってるやつに言われた、完全無欠の貧乳宣告!!
アンタにだけは言われたくない!!絶対に言われたくない!!
何よりキーボードって、その無駄に近代的な比喩表現が一層腹が立つ!!


  「パッドだけが正義だと思っているのね、貴方って人は…!!」
  「いえ、非難している訳じゃないですよ、人によってはキーボードの方が指に馴染むってコトもありますし」
  「馴染…!貴方と一緒にしないで頂戴!!!私はそんなクセなんて無いわよ!!」
  「お、落ち着いて下さいお嬢様!ですから手に合うモノは人それぞれ」
  「だから私は揉んだりしな〜い!!」
  「いえ、揉む必要はありません!要するに押し易さや動かし易さだけが決め手になるんです!」
  「そんなコツなんて聞いてないって!!」
  「ですから私に限らず、普遍的にパッド選びは全て同じです!如何に違和感無くボタンを押せるかどうかが
   気持ちよくプレイ出来るかどうかのカギを握っているのですよ!!」



 違和感なく押せれば、キモチの良いプレイ…
 嗚呼、なんて甘美で淫靡で瀟洒で破廉恥な表現なの…

 咲夜、貴方は遠い世界にいるわ。私の手なんて届かない、及びも付かぬ遙かな遠い世界に…



  「もう…ダメェエェ…」





 レミリアの両の鼻腔を、堪えきれないスカーレットシュートがほとばしる。
紅き奔流はロココ調の寝室に無駄にマッチした優美なアーチを描き、仰向けに昏倒する吸血鬼の軌跡を宙に描き出す。
咄嗟に背に手を回し介抱する咲夜の腕の中で、まるで今生の別れかのように暖かな涙を滂沱と流し乍ら、
文字通りスカーレットデビルとなったレミリアは哀しげな笑顔を浮かべ、壊れた人形のようにガックリと意識を失った。



 大変だわ何か役に立つモノ無いかしらと慌ててまさぐった自らのポケットの中で、咲夜の指が何かに触れる。
そうだ。もはや用済みだから流し台で処分しようと、さっき部屋に戻って持ってきていた例の秘薬の瓶。

 永琳良かったね、貴方はやっぱり薬剤師。
現にこの秘薬はお嬢様の為、こうして薬として立派に役に立つことが出来るんだから。





  「月の秘宝の気付け薬です。お嬢様、どうぞ」



 そう囁いて咲夜は、仰向けに倒れだらしなく開け放たれたレミリアの口の中へ、
残り二日と二食分残っていた矢吹ジョーを、ひと思いに全て注ぎ込んだのだった。


《完》  










 ゲームするのはパッドだけど胸に詰めるのはパッ「ト」なんだぜ? って後々に知りましたが、そんな些末な違いは咲夜さんの胸のサイズと同じくらいどうでも良いのであった。
 そして沖田浩之をどれだけの人が知っていたんだろうかという点は、もっとどうでも良いことでしたとさ。
 これを書いた当時、私は21歳です。あれれ。 

 ちなみに私は、パッドにPSコントローラーを繋いで東方をプレイしています。
 ゲームと言えばファミコンという育ち方の私にとって、キーボード操作でハードとかルナの弾幕を抜けられるのはリアルで信じられません。神いわゆるゴッドです。二礼二拍手一礼しちゃいます。
 巧みな指遣いで東方のキャラを責める人達。いえもちろん他意はありませんよ? ありませんってば。
(初出:2006年2月26日 東方創想話作品集26)